はりぽた小説
□Begining of All.
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「ここ、いいかい?」
コンパートメントの扉が開いて、声がした。
「他はみんないっぱいでさぁ」
今このコンパートメントに座っているのは俺一人。
朗らかに言うそいつに、俺はわざとそっけなく言った。
「好きにすれば」
言った直後に後悔する。
気を、悪くしただろうか。
それでも、何も言わなかった。
無駄な馴れ合いなど、必要ない。
ふん、と俺は再び窓枠にひじをついて、流れ去っていく車窓の風景に目をやった。
何が見えているのかなんて、わからなかったけれど。
しかしそいつは、俺のぐちゃぐちゃに絡み合った思考のすべてをすっとばして、笑みを含んだ声で言った。
「ありがとう」
少し、驚いた。
いや、少しどころじゃないな、かなり。
Beginning of All