はりぽた小説

□悪夢
1ページ/1ページ

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
 夜の静寂、という一種の法律を無視し、突如として非常に聞き心地のよろしくないだみ声による悲鳴(と俺は思う)が、グリフィンドールの男子寮に響き渡った。









 悪夢










俺はがばりと起き上がり、勢いよくカーテンを引いた。
 寝起きがいいとか悪いとか、そんnあことは言っていられないくらい、危機迫った声だった。
 ベッドから飛び降り、悲鳴の発信源のベッドのカーテンを思い切り引くと、俺と同じく飛び起きたらしいリーマスが走りよってきた。ピーターの小太りの尻は、哀れにも床に転がっていた。ベッドから落ちたらしい。
「ジェームズ!どーした?!」
 ベッドの上に座り込んだジェームズは、幽鬼のような顔をしていた。月明かりのせいで、余計血の気が失せて見えて(いや、実際失せているらしいけど)、墓場から墓石をずらしてずりずりはいずって出てくるような化け物のような顔だった。
「ジェイ?!」
 俺の声に無反応なジェームズに、俺は焦って奴のベッドに上がりこむと、肩をつかんで揺さぶった。
「おい!!しっかりしろ!!」
 俺の後ろで、リーマスとピーターがランプの用意をしているらしい気配がする。やがてリーマスが、ジェームズに負けないくらいの青い顔で、ランプを持って俺たちの横に来た。
「ジェームズ?!どうしたの?!大丈夫?!」
 俺は気づいた。
 こいつ、震えてやがる。
 この男を震え上がらせることができる奴なんて、俺は知らない。あ、一人だけいるか。リリー・エヴァンス。だがあの女は今は女子寮のはずだし、普段からうざったがって、しかも嫌っている相手であるジェームズに夜這いまがいの嫌がらせなどしかけるとは考えにくい。
 じゃぁ、なんだ。
 まさか、ヴォルデモートか?!
 いや、だがこいつがヴォルデモートごときで震え上がるか?まさか、何か強烈な闇の魔術でも仕掛けられたとか?!
「おい!ジェームズ!!しっかりしろ!!どうしたんだ!!言え!!!」
 再びゆさぶると、ジェームズはようやく歯を鳴らしながら俺を見た。
「ジェイ!俺がわかるか?!」
「し・・・シリウス・・・・!」
 とりあえずか細くも答えたジェームズに、ほう、と胸をなでおろし、俺は問いを重ねた。
「何があった?」
「た・・た、大変だ・・・っ・・・!」
 何だ、大変って。
 今日提出のレポートでもあったか?
 いや、そんなの、一時間もありゃ終わる。
 ていうか、そんな震えるような問題じゃない。
 じゃぁやはり、闇の魔術か??
「何が大変なんだよ?」
「あ・・・あ・・・っ・・・!」
「おい、ジェイ、何とか言え」
 俺がガクガクとジェームズの肩をゆすると、ようやくジェームズがわなわなしつつも、口を開いた。
「り、リリーが・・・僕のリリーが・・・スニベラスと付き合うって!!!」
 どうしよう!!と俺のパジャマにすがってわめくジェームズに、俺は無言で拳を固めた。



 新たな夢へと旅立ったジェームズをベッドに蹴り倒し、俺は奴のベッドのカーテンを、全てを封じるようにぴたりと閉めた。
「し、シリウス・・・ジェームズ、死んじゃってないよね・・・?」
 リーマスが、恐る恐ると言った様子で俺の袖を引いた。
「あぁ?アイツが殴られたぐらいで死ぬタマかよ」
「そうじゃなくて・・・」
「じゃぁ何だよ?」
 リーマスとピーターは顔を見合わせると、リーマスが俺を振り返り、口を開いた。
「リリーとセブルスが付き合う夢なんてみて・・・よくジェームズがショック死しなかったなーって・・・」
「!!」
 俺ははたと不安になった。
 ありえる。
どうしてその危険性に気づかなかった。
 しかも、奴の口調では、リリーが宣言したようだった。
 俺は身を翻して、今さっき閉めたカーテンを音を立てて引きあけた。
「おい!!ジェィ!!ジェームズ・ポッター!!生きてるか?!おい?!」
 胸倉をつかみ、がくがくとゆさぶると、さっきまで真っ青な顔をしていたボケ野郎は、へにゃー、とそれこそ音がしそうなツラで、ヘラヘラわらって寝言を言った。
「えへへ・・・僕のリリーっ!!君は僕の太陽だ、女神だよマイハニーっ!!あぁ、いつになったら君に僕の心が届くのだろうか・・・って、まってよマイスウィート・・・・」
「・・・・・・・・」
 ぶち、と俺の中で何かが切れた音がした。


「ムーニー、明日って、生ゴミの日だっけか?」
「・・・・どのゴミ箱からも返品されると思うんだけど・・・」
 生ゴミ、と紙に書いて伸びている奴の顔に貼り付けた俺は、今度こそ奴のベッドのカーテンを引いた。
 ぬくもりのすっかり逃げ去った自分のベッドにもぐりこむと、俺は鼻息荒く毛布をかぶった。
 リーマスとピーターがそれぞれのベッドにもぐりこむ音がする。
 あー、バカをみた夜だった。
 俺は、こんなバカげたことでよかったと胸をなでおろす自分がいることを感じつつ、それに気づかないフリをして憤慨しつつ、目を閉じた。











fin...
アホねたです。
ジェーさんはヴォルにはびびらなくてもリリーに関してはビビリまくり(爆
シリウスもなんだかんだ行ってリリーは怖かったりww

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ