銀魂小説 伍

□たいせつなあなたへ
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「凡そ生れて人たらば、宜しく人の禽獣に異なる所以を知るべし。蓋し人には五倫あり、而して君臣父子を最も大なりと為す。故に人の人たる所以は忠孝を本と為す」










たいせつなあなたへ









「・・・・・・・」
「・・・・・・どーした」
「・・・・・・難しい」
「・・・・・・そうか」
 銀時の前のおかれた紙に、お世辞にもすばらしいとは言い難いも、しっかりと迷いなく書かれた漢文。高杉が書いたものだが、読みすぎて、もう暗記してしまった内容だ。
「・・・・・・いいか、意味を言うぞ」
「うん」
「およそ人として生まれてきた以上は、まさに人が動物と異なっている理由を知っておかねばならない。思うに、人には人として踏むべき5つの道がある。そしてそのなかでも君臣の道と父子の道が、もっとも重要にして大切な道であると考える。故に、人が人であるその根本は忠孝の道にある」
「・・・・・・・」
「・・・・・・どーした」
「・・・・・・・・・・・・・・・難しい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうか」
「つまり、人に生まれてきたンなら、人が犬や猫、鳥と違うっていう理由を知っとけってことだ。で、先生は、5つの道を考えた。そン中でも、忠孝がもっとも大切だっておっしゃったんだ」
「ちゅうこう?」
「・・・そうだな・・・なんつーかなァ・・・大切に思う人を、大切にしろッてことさ・・・・・まぁ、・・・・お前にゃ、まだ早かったかな・・・」
 そっと、ボロボロになった一冊の本を手に取り、文机の前であぐらをかいて背を丸めたまま、ながめた。
「何?その本」
「今教えたことが、書いてあるんだ」
「しんすけの、せんせい?」
「・・・・あぁ・・・俺の・・・すべてだった・・・」
「せんせいが、しんすけの忠孝のあいて?」
「・・・・あァ、そうだったんだろうな・・・・」
 銀時は、しばらくじっと高杉の手の本を見つめていたが、やがて顔をあげた。
「じゃぁ、俺の忠孝の相手は、しんすけだな!」
「・・・・そうなのか?」
「そうだよ!だって、おれのすべては、しんすけだよ?」
 フン、と鼻を鳴らした。
 ガキってのは、どうしてこう・・・なんか、むずむずすることを平気で言いやがるんだ・・・。
「バカが・・・」
 手にした本を、そっと、銀時に差し出した。
「お前なら、これ、読んでいいぜ」
「?」
「他の誰にも触らせねェんだが・・・・お前なら、いい。だが汚すなよ、破くなよ。殴るからな」
 そう、以前勝手に触れた雑魚がいたが、そいつはその場で斬ってやった。
「・・・大事なものじゃないのか?」
「大事だから、お前だけだ」
「・・・・・・いいの?」
「しつけーな。いいっつってんだろクソガキ」
 また子にでも自慢してやりな、とささやいて、高杉は銀時の腰帯をつかんだ。
 いつも高杉が銀時を持ち運びするときに持っているから、銀時ももう慣れているらしい。
「字の勉強は終わりだ。そろそろ、京に着くだろう」
「京って、どんなとこ?」
「そうだな・・・まぁ、いろんなものがあるぜ。江戸、大阪に次いでな」
「ふぅん・・・」
「ま、適当に見せてやる」
「ほんと?!」
「あぁ」
 高杉は銀時を持ったまま、甲板に向かった。
 そろそろ、京の町並みが見えるはずだ。
「一旦小型船にうつってからだからな。羽織だけもってきゃいい」
「うん!!」
 甲板に向かう途中に、「また晋助様、銀時様持ってる〜っ!!」とわめかれるのは、その、すぐあとのこと。





fin...
また子は勝ち目ないけど、銀時をライバル視笑
一番上の理屈っぽい文は、吉田松陰先生の教えの柱を成す、士規七則(しきしちそく)をそのまま引用させていただきました。
・・・先生の直筆の奴のコピー、持ってます笑

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