銀魂小説 伍

□剣
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「しんすけ、剣術教えて!!」
 俺は良い気分で都都逸なんて作っていたら、獲物を狙うクソガキにつかまった。
 仕方ねぇ、敵はヒマなんだ。
「んー・・・」
「ねぇってば!しんすけが忙しいみたいだったからへんぺーに聞いてもまたこに聞いても、みんななんか駄目って言うんだよ!!」
 当たり前だ。
 俺が、そうしたんだから。
「うっせぇなぁ・・・ったく、わかったよ」
 俺が腰を伸ばしあくびをしながらうなずくと、銀時はなにがそんなに嬉しいのかと呆れるくらい、飛び上がって喜んだ。



















「うおりゃぁぁっぁぁ!!!!」
「脇もっと締めろ、がら空きだ」
 力任せに突っ込んでくる銀時のわき腹を、奴の小さな竹刀を弾いたその流れでつついてやった。
「いて!」
「痛くねぇよ、痛くしてねーんだから」
 基本の基本、それを叩き込むのにそんなに時間はかからなかった。こいつには天性の素質がある。
「ほれ、斬り返し。来い」
 基本練習である斬り返し。ひたすらの面うち。左右面。胴。抜き胴。小手、払い小手面。
 名前をあげればきりがない。所詮道場剣術だと笑うやつらもいるが、すべての基本はここからだ。
「胴ーッ!!」
「嘘つけッ!!」
 面を打ち込みながら胴とか言いやがった!このガキ!!
「何が胴だ、アホ!」
「間違えちったw」
「・・・・斬り返し、20回だ。休み無し。さっさと来いこのクソガキ」

 しかしまぁ、この小さな体でよくやる、こいつは。
 本当に20回やりとげた(といっても最後はヨレヨレだったが)銀時の頭をぽんと撫でて、俺はそこらへんにいた奴に、水をもってくるように言った。
「でもさ・・・なんで・・・へんぺーとか・・・教えて・・・くれないのかな・・・」
 荒い息の下で、銀時は小さく眉根を寄せた。
 俺が教えるなと言ったと、どうして言えようか。
 だが。
「・・・やっぱ、俺・・・要らないのかな・・・」
 膝をかかえたチビ助を見て、俺は思い切り息をつき、ガシガシと頭をかきむしった。
「馬鹿か、テメェ」
「だって・・・」
「俺が言ったんだよ」
「え?」
 もうこうなっては仕方ない。
 銀時を診せた闇医者が言った言葉が、脳裏に蘇る。
『ヒトを信じたいと思っているのです。切望していると言ってもいい。でも信じられないのが、彼らです』
 銀時の体の傷を見て、野郎は言った。

「銀に勝手に教えんなってな」
「・・・どうして・・・?・・・俺・・・強くなって、しんすけを助けたいって・・・」
「あー泣くな泣くな。そういう意味じゃねぇよ。超絶ネガティブ野郎め」
 今にも崩れそうな顔をした銀時の頭を慌てて抱えこみ、俺はその頭をぐりぐりと撫で付けた。
「言ったろが。俺ァ好かねェ奴を拾ってきたりしねェって」
「・・・じゃぁ・・・なんで・・・?」
 腕の中から、俺を見上げてくる銀時を、俺はため息をついて撫で続ける。
「剣てのは、クセがつく。それは基本を教えた奴のクセだ。なんとか流、なんて流派はあるが、教えた奴のそれぞれクセがあるんだから、もっと細かく「武市流」「来島流」みてェになっちまうんだよ。俺はそれが気に食わなかっただけだ」
 なんでこんな恥ずかしいこと言わなきゃなんねーんだ?
「・・・じゃぁ・・・?」
 だが、俺の着流しのあわせを握り俺を見上げた銀時の目を見て、俺はまた馬鹿な自分にため息をつくハメになった。
「他の奴に俺を教えさせなかったのって・・・」
「お前は高杉流でいくんだよ、アホ」
 そう言ってまた頭をぽんと撫でると、銀時は花が咲いたように笑い、いひひ、とよくわからない笑い声をあげて、さっきのしおれ具合が嘘のようにぴょんと俺の腕から抜け出した。
 外していた胴をつけ、竹刀を握り、俺の前に走ってくる。
「ね、続き、やろっ!!斬り返し?それとも面うち??」
「その前に水分取れ、アホ」
 調度下っ端が持ってきた水を銀時に渡し、そろそろ俺も末期だな、なんて思いながら、銀時が急いでコップの水を飲み干すのを見ていた。


「じゃ、やっか。高杉流の稽古だ」
「うん!!」








fin...
 末 期 な の は 俺 だ 。

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