銀魂小説 弐

□しあわせなゆめ
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 どこだろう、ここは。
 きょときょととあたりを見回すも、そこは闇。
 何かを追いかけて、追い求めてきたような気がするけど。
 それが何か、わからない。
 否、わからなくなってしまった。
 ここは、どこだろう。
 暗闇に囲まれて。
 前にも、こんなことがあった。あれは、確か夜の森でだったけど。・・・あまり思い出したくはない。
 それにしても、ここはどこだろう。
 森の中ではないことは確かだし、だいたい空まで真っ暗だ。
 ふと、ひどく自分が疲れていることに気づいた。
 ずいぶんと歩いてきたような気がする。
 周りに広がるのは暗闇ばかり。
 気が変になりそうだ。
 と、その時、何か、白っぽいものが見えた。
 すぐにわかった。
 あの人だ。
 自然と、走り出す足。
 あの背中を、どれだけ見つめたことだろう。
 疲れなど忘れて、駆け出した。
 駆け出して、思い出した。
 そうだ、俺は。
 ずっと、走ってた。
 あの背中を、追って。

 しかし。
 いくら走っても、その影にはおいつけない。
 息が切れて、苦しくて。
 今日負った傷が、じくじくと痛みだして。
 それでも走るのをやめてしまったら、今度こそ二度と会えない気がして。
 走って、走って。
 そして。
 影は、消えた。
 足がもつれて、ついに倒れた。
 涙が、止まらなかった。
 涙が。
 止まらなかった。


「・・・んすけ、晋助!」
「!」
 条件反射のように目を見開いた。
「大丈夫か?」
 そこにあったのは、見慣れた、銀髪。
「・・・・ぎんとき・・・・?」
「なーに泣きながら寝てんの?アレ?逆か?寝ながら泣く?まぁどっちでもいいか」
「・・・・え?」
 未だ状況がつかめないまま、高杉は自分の頬に触れた。
 生温かく、濡れた。
「・・・怖い夢でも見たか?」
「・・・・ゆ・・め・・・・?」
 そうか、アレは、夢だったのか。
 寝転んだまま見上げるアジトの天井の雨の染みが、暗闇になれた目に映る。
 その中で、ほのかに輝く銀。
「そ・・・・か・・・夢か・・・・」
「大丈夫か?」
 はは・・・、とかわいた笑をもらした高杉の頬に伝う新たなしずくを、温かい指がぬぐう。その心地よさに、しばし浸った。
「悪夢なんかじゃねェよ・・・」
「じゃぁ、何?」
「逢えるハズのない人に、逢えた」
 逢った、といううちに入るのだろうか、アレが。
 置いていかれた、だけじゃないのか。
「あの姿を、見れた。だから・・・」
 幸せな、夢だ。
 これは。
 そうか、と優しく笑んで、銀時はまた高杉の頬をなでた。
「明日もあるんだ。もう寝な、総督。いい夢見て、さ」
「・・・銀時」
「何?」
 高杉は、自分の頬をなでていた指を掴んだ。
「何、この赤ん坊握り」
「殺すぞ。・・・・もう少し、ここ、いろ」
 暗闇で、銀時が笑んだのがわかった。
 甘えだと気づかれないようにわざとぶっきらぼうに言った高杉の努力空しく、銀時は優しく答える。
「はいはい」
 ちょっと待て、と銀時は立ち上がり、なにやらゴソゴソやりだした。
 ようやく戻ってきたと思ったら、3尺ほど離れていた銀時の布団が、高杉のそれとくっついていた。
「一緒寝ようぜ。そのほうが、いいだろ?」
「・・・ん・・・」
 ごろり、と自分の横に寝転がる銀時に、高杉は寝返りを打ちくっついた。
 高杉の方を向いて、横向きになった銀時の胸に、額をつけた。
「ぎんときぃ・・・」
「なんだよ」
「先生さぁ・・・」
「うん」
「俺のこと、置いてっちゃったよ・・・」
「・・・そっか・・・」
「・・・・・っく・・・・ぅ・・・・」
 背に、温かい手が回された。
「晋助さぁ」
「・・・な・・っ・・ん・・・だよ・・・・?」
「夢ってさ、おきてから、良かった、って思うために見るんだってよ」
「・・・・?」
「幸せな夢を見れてよかった。
 怖い夢でも、夢でよかった。
 だから、お前の夢は、二重においしい夢だったろ?」
「・・・え・・・?」
「逢えないハズの人に逢えてよかった。
 その人に、置いていかれたのが、夢でよかった。
 てさ」
「・・・・・あ・・・・・」
「だろ?」
 わかったら、もう、寝ろ。
 そう言って、再び背をさすられる。
「大体、先生がお前をおいていくわけないだろ?」
「・・・・うん・・・・」
 だから、安心して、寝ろよ。

 背をさすられながら、高杉は小さくみじろいで肯定とした。
 あの夜の森でも、今の“幸せな”夢でも、助けてくれるのは、なぜかいつもこいつなんだ。

 いつも。
 
 いつも。

 ぬくもりをかみしめながら、目を閉じた。



fin....

どうしても銀→→←←←高っぽくなる。うわ、両者の距離が・・・!!(違

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