結界師(限良)


□あなたへ
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あなたへ





…いねーよ。
俺を好きになる奴なんか
いねーよ。


俺と同い年の志々尾の口から放たれた悲しく寂しい言葉。
こいつは今まで、どれだけ泣くことを我慢してきたのだろう?
孤独に怯え、それでもやっぱり一人だったのだろうか?


俺でよければ側にいるよ。
ずっと側にいるよ。
だから、もう怯えなくていいんだよ。


「そんな寂しーこと言うなよな。」
そうやって俺は、寝るこいつに起きろと手を差し伸べることしか、今は出来ないのだから。
寂しい言葉とは似合わず、時折見せる小さい子どもみたいな表情をしているこいつを、心の底から愛しいと想うのだ。
「なにボサーとしてんだよ。」
早く立ち上がれと、急かす。
「…いつもボーっとしてるのはお前だろう。」
と、志々尾は俺の手をとった。



休み時間の終わりが近いことを告げる、予鈴のチャイムが鳴り響く。
「やべっ、次体育じゃん!」
「今日は、体育でも保健だろう…」
慌てる必要はないと、志々尾は歩き出す。
きっと、その顔はいつもより穏やかな表情だったことを良守は知らない。







あなたへ
(お前を1人になんかさせないよ。ずっと、そばにいるよ。)
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