まんが日本昔ばなし

□うばすて山
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昔、ある国で60を過ぎた老人は山に捨てろという命令があった。
その命令を破ると捕まってしまうのだった。

ある村の男の母もついに60になってしまい、男は背中のかごに母を乗せ、うばすて山へとトボトボと進んだ。

母は
「こんな遅く歩いてたら日が暮れてお前が帰るのが大変になる、もっと急げ」
とせかすが、男はそれでも足が進まずトボトボと進んだ。

すると、背中からパキパキと変な音がするので男が振り返ると、母が木の枝を折っている。

「何しとるんじゃ」
と男が聞くと、母は
「お前が帰る時、道に迷わないようにこうやって枝を折っとるんじゃ」
と言った。

「俺は母を捨てようとしてるのに、母はこんな時でも俺の心配をしてくれているのか」
と涙ぐみながらも、うばすて山に到着してしまった。

男はその場を後にすると、雪が降ってきた。
「おっ母、寒いだろう」
と思うと男は居ても立ってもいられなくなり、母を連れて帰ってしまった。

母は家の地面に穴を掘ってそこに住まわせ、いつもと変わらぬ顔で過ごしていた。

すると男の住んでいる国は隣の国から難題を押し付けられた。
『灰でなった縄を用意しろ。答えることが出来なければお前の国を乗っ取る』
というものだった。

男はその立て札を見て母に相談すると、母は
「簡単じゃよ。塩水につけて乾燥させた縄に火をつければええ」
と言い、その通りにすると灰の縄が出来た。

するとまた隣の国から
『七節曲がった竹に糸を通せ。出来なければ国を乗っ取る』
という問題が来て、男は母に相談すると
「竹の端に甘いのを塗って糸を結んだアリをその中に通せばええ」
と言った。

するとまた隣の国から
『叩かなくても音が鳴る太鼓を用意しろ。出来なければ国を乗っ取る』
と来て、男は母に相談すると
「太鼓の中にクマンバチを入れればええ。勝手に蜂が動いて音が鳴る」
と言った。

さて、その国の殿様は
「どうしてこんなに知恵が思いつくのか?」
と男に問うと、男は少し悩んだ後、母を捨てずに家に住まわせている事、今までの知恵は全てその母が考えた事だと言った。

殿様は
「そうか、今までのは老人の知恵だったのか」
と感心し、老人を捨てろという命令を取りやめた。

隣の国は、この国の頭の良さに恐れをなしてもう何もしてこなかったそうな。



以上、長野県のお話。

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