Novel

□きすのてほどき
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静まり返った部屋。

そこにシャロンはいた。


テーブルの上には明らかに冷めきった紅茶と、未だ手付かずのロールケーキがじれったい佇まいで、今か今かと自分を食べてくれるのだろう主人をつぶさに見つめていた。

完全に閉まっていないカーテンの隙間からは月が下界を眺めるように位置する。


「……………はぁ」



壁に反響して憂鬱そうな溜め息が響いた。

シャロンの手には閉じられたままの本が一冊。

それは俗に乙女のバイブルというべきもの。



そう、ロマンス小説。
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