Novel
□ハニカミスパイス!!
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それは砂糖菓子のような光景だった。
真っ白な屋根。
真っ白な地面。
真っ白な木々。
何もかもが純白の白で埋まっている。
限りない白を纏って静かに佇む世界の中、空だけが唯一その白と相反するように灰色の綿雲を一面に並べ、空を覆っていた。
「まったく……」
サクッと白い絨毯を踏みしめる白いブーツ。
周りの景色も手伝ってか彼女の髪と真っ赤な服は一際目立っていた。
「まあまあ☆」
その少女に金髪の少年が後方からニコニコと笑いながら宥める。
『働かざるもの食うべからず』
そうギルバートに言われ、買い出しに行って来いと家から追い出されたのはついさっきのこと。
「なんでこの私が、下僕のそのまた下僕の指示に従わなければならんのだっオズ!?」
「あはは、まあでも仕方ないんじゃないかな?なんやかんやでオレ達の夕食作ってくれてるんだし……」
「フンッ!寧ろ奴にはそれぐらいしか能がないからな!」
アリスは自らの漆黒の髪を滑らかに掻き上げた。
今の彼女の台詞を自分の従者がここで聞いていればと想像すると自然にオズの口からフッと白い吐息が洩れた。
その時。
「おや?嬢ちゃんはあの腕相撲の時の……」
不意に声を掛けられ、目をやれば中年の優しそうな男とその店らしきものの前だった。
「ん?私か?」
「あの図体のでかい男に勝った嬢ちゃんだろ?いや〜また逢えるとは思ってなかったよ!」
遠くない過去にギルバートの帽子が盗まれたとうう事件があった。
どうやら彼はその時の見物人だったようだ。
「あ、そうだ……ほら?」
「肉っ………!?」
途端にアリスは大きな瞳を輝かせる。
「い、いいのか…!?」
「ああ、嬢ちゃんとの再会の記念だからな」
しかし。
アリスがそれを受け取ろうと手を伸ばした瞬間、オズの口が開かれた。
「ダメだよ、アリス?先にちゃんとお使いを済ませてからでないとダメだってギルがしつこく言ってたし」
「あはは!そうか、それじゃあまた後で寄っておいで?」
「くそっ…あのワカメ頭め……」
その頃。
「くっしゅんっ!」
ギル宅では人知れず、くしゃみが連発されていた。