お話

□ミンナがケモノ!!物語
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「あぁーっ!うるせぇっ!!
俺は一匹で居るのが好きなんだよ!!俺は一匹・・・」

アキラはシロガネに対して抵抗する最中、
『一匹狼なんだ』
と言おうとして、 ふと引っかかった事を悩みます。

狼は犬の仲間か・・?
しかし、『一匹猫』では何か締まらない。
それに、虎と同じで語呂も悪い。

「っもー!恥ずかしがっちゃって☆恥ずかしがっちゃってぇ!!」

アキラが動きを止めた、その隙を突いて、シロガネが再び抱き付き頬擦りをします。

「ぎにゃーっ!止めろっこの・・・止めろーっ!!」

アキラがシロガネの腹に猫パンチを入れながら
叫んだ、その時。

「『お兄さんは許しませんよキック』!!」

端からみたら、『子猫を喰わんとする鴉の図』にしか見えないその中に、
颯爽と現れた 影。

「あいたっ」

シロガネが悲鳴をあげました。

『お兄さんは許しませんよキック』とは、肉球にも きゅっ と力を入れて、さり気なく爪が引っかかりやすい角度を計算して入れている かなり 危険な技です。

それをシロガネにかまして、すちゃりと華麗に着地したのは・・・

「コウ兄――!!」

そう、彼こそは『コウ』という名の黒猫。

別に『この辺一帯を纏めるボス』・・とかではないのですが、何かやたらと強くて アキラの様なおチビ達の間でなかなかに人気(猫気に限らず、犬気も)ある雄猫だったのです!
コウは雄々しく吠えました!

「てめぇっ!俺の弟分に何しやがる!?」

その様子を、アキラは子猫特有の くりくり なおめめをキラキラさせて観ています。

「嗚呼、痛かった。
・・・というか、貴方こそ何するんですか?
私達、せっかく楽しく遊んでいたのに・・・」

「んなワケ無ぇえっ!!」

アキラは全力で否定します。

「そんなっ!?忘れたんですか、アキラ君?
あの甘い夜を・・!?」

「何の事だよ!?勝手に思い出作んなよ!!」

「アキ・・!」

コウが思わずといった風に声をかけます。

「何、コウ兄?」

「・・・流石に、鴉相手にそれはどうかと・・・?
大体、ホラ。 アキってまだちっさいし?」

「信じたのかっコウ兄!?」

しょっく!!

何とコウは『おバカ』だったのです!!!

「ふっ。想い合う者達に、種族の違い等・・・壁になり得ま・・」

「種族と天と地つまり生活圏の違いと同性問題があるぞ!」

すかさず、たたみ掛けようとするシロガネに、アキラも何とか妨害を入れます。

「・・些細な問題ですよ、アキラ君?」

まるで聖人君子のような笑顔。

「些細じゃねぇ・・」

しかし、その実 内面は悪魔より妖怪寄りの変質鳥だと知っている、聡い子猫は唸るように威嚇します。
ふわふわな毛もこの時ばかりはピンピンと逆立っていました。

「大体なぁ・・っ!?」

アキラの髭がヒクリと動きました。

「あーきぃーらぁー・・・!!!」

初めは微かに聞こえる程度

しかし、直ぐに大音量へと上がって来ます。

アキラを呼ぶ声。

「・・・あいつか」

声の音量変化速度から、その接近速度の高さが伺い知れるのですが・・。

「てか、この揺れは・・!」

子猫なアキラにとって地震に等しい地響きと共に迫り来るのは・・・

「アキラーっ!!」

ふばっ!!!

高く跳躍したその姿が、太陽の逆光で黒くアキラの目に映ります。

その腹部を視認して

「最終選考で柴犬は負けたのか!?」

思わず、他世界からの意識を受信して アキラが叫びました。


そう、その姿は間違い無く・・・

ゴールデンレトリバーです!

一応、『まだ』子犬で通りそうな体躯なのですが、それは その犬種間での話です。

一般的な子猫サイズであるアキラにとってそのサイズは

どこがやねん!?

と 叫ばずにはいられない程でした。

つまり、

「待てっケンゴ!!」

そんな奴に乗っかられた日には

(――死ぬっ!?)

そういう事だったのです。

しかしアキラは子猫ながらも瞬発力はかなりのモノでした。
さっと身代わりを其方に押し出して、自身はぱっと飛び退きます。

「・・・て、俺?」

ぶしゃっ

次の瞬間ゴールデンケンゴに潰されたのは、他に誰あろう、

コウでした。

「コウ兄ぃーっ!!」

一応、それっぽく叫んでおく事も忘れません。

其処までしてから、


咄嗟に前に突き出してしまったけど、考えてみれば必要無かったかもしれない・・・


気付きました。


こーいう時はアレだ、

両前足を合わせて、


合掌。


何処かで高い金属音が長く響きます。

きっと近くの幼稚園で園児がトライアングルを打ち鳴らしているのですね。











「・・・流石アキラ君。惚れ惚れしますよ」

「コウ兄は強いからな、
アレくらい平気なんだ!」

ケンゴの下で足をピクピクと痙攣させているコウを示して、胸を張るアキラです。

兄貴分が強者というのは誇らしい事ですからね!






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