焦鶏小話部屋

□にっき小話
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「はーい、昶君のごはんですよー?」

そう呼べば『にゃ』と短く返事しながら、ゆったりとした足取りで此方へ向かってくるワタシの昶君。

彼はもうすぐ子猫から卒業するだろう繊細なお年頃。

軽やかに揺れる尻尾は彼の気まぐれな性格を表しているかの様。

……と、ワタシの用意したごはんに真っ直ぐ向かうかと思われた彼が、思い出したかの様に急に方向転換しました。

何でしょう?

あ、ベッドの下へ入りましたね……

(……まさか、)

昶君がベッド下から戻るのに、そう時間はかかりませんでした。

(ああ、やっぱりか)

彼はどこか自慢気に、本日の狩りの『成果』を持ってきます。

ワタシの昶君は多少気難しいながらも、とても優しい良い子なのです。

だから、週に5回程、ワタシの『ごはん』を用意してくれるのです。

(しかしまた、今回のはでかいな……)

本当に我が家にこんな大物が住み着いているのでしょうか。

何かしら仕掛けの設置を真面目に検討すべきかもしれませんね。

(だが、それをすると昶が引っ掛かるかもしれねぇ……)

『にゃ』そう言って、昶君がワタシの前にもそっと『ごはん』を差し出してくれます。

「……今日もまた大物ですね!流石は昶君です!!」

ワタシは自分の分の『ごはん』を暫し見つめた後、そう褒め称えます。

しかし、褒めながら撫でようとすると、既に食事中だった昶君に鬱陶しそうに猫パンチされました。

「すいません」





(さて、これは……燃えるゴミ……か)

如何にワタシが昶君を愛していようと、流石に『これ』は食べられないのです。

ごめんなさいね、昶君。

当の昶君は、自分の食事を進めながらも此方の様子をうかがっています。

(しっかり者め)

しかしワタシもこういう時の対応は心得ていますから、問題ありません。

先ず、使い捨ての白い紙皿に『ごはん』を割り箸で載せて、皿を半分に折って……

「餃子みたいですねー?」

なんて言いながらキッチンへ後退して、カウンターの影で『餃子』をゴミ袋の中へ。

ゴミ袋は勿論二重密閉です。





可愛い可愛い昶君を傷付けない為ですからね、何度繰り返す事になっても苦にはなりません。

どうやらまだ何か貯蔵されているらしいベッド下から異臭が漂って来たとしても、昶君に罪はありません。

全ては脆弱な『ごはん』が悪いのです。

悪いのは腐敗を促進させる微生物です。

気持ち悪いウジ虫とか。

腐った臭いです。























白いアイツが白い猫になる夢をみた。

やっぱりか。

はやく魔法が解けると良いのに。

なんて。





・2009/6/1
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