お話

□大人買い
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「っあー! ダメダメ!! 劉黒! そんなのとくっ付いてたら妊娠しちゃうよ!?」

そう声を張り上げて二人の間に割り込むように劉黒に抱き付いたのは やはり 洸だった。

「・・・っ! どーいう意味だっ! ああっ!?」

洸曰わく。『黙って立っていれば 薄幸の未亡人で通りそう』な容姿からは想像出来ない、意外星の意外王国からやって来た意外女王の如く。どこぞの組長的なガンを洸に飛ばす、白銀。

自身の腹部にそっと手を当てて首をひねる、劉黒。

「いや、ねぇし! ねぇからっ劉黒!! 大体お前その身体、男モンだろうがっ!」

「・・・いや、そういえば 私は何時の間に性別を決めたのだろうか・・・と」

そういえば、洸は兎も角。自分達は本来、人間の前に生物とも言い切り難い存在だったな と・・・今からでも変更出来たりするのか? とか白銀も劉黒に続いて、思わず首をひねってしまう。今更ながら自分達の特異性に呆れたりもする。

その様子を見て、

(二人とも、変なとこで似てるよねぇ・・・)

こっそりと苦笑を漏らす洸だった。

「しかし。子供が生まれる事は、良い事だよな?」

自信なさげに尋ねてくる劉黒。

「・・・親の組み合わせによる」

白銀は、かつて見たことの無い。何とも形容しがたい表情でそう答える。

扱いの上手い下手はさて置き、ガキに『懐きそう』な奴だよな・・・こいつ
とか考える。

「・・・ねぇ、劉黒。俺じゃ駄目なの?」

ふと、いつも通りにおどけているようで いつもと違う。どこか縋るような声で、洸が尋ねた。

ぽふん と手を打つ劉黒。

「そうか・・・! 洸は私の子なのだな」

妊娠しなくても良いのか と一人納得しながら。どこまでも自然体で洸に抱き返し、その頭を撫でてやる劉黒と。

でしょでしょ と、本当に嬉しそうに。気持ち良さげに撫でられている洸。

その様子を、また 形容し難い。敢えて説明を付けるなら、小さな子供が お気に入りをとられて、或いは手放すことになって 拗ねているような空気を漂わせて。

白銀は眺めていた。

ぼんやりと。

ただ、眺めていた。
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