お話
□しかし、あっと言う間だ。
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駅前の広場中央に立つ ソレ を見る少年の顔はどうしたって呆れ顔だ。
「・・・いくら何でも早過ぎだろ」
最近 寒さが増してきたとは言え、未だ11月のはじめだ。
『本場』ならともかく、と。
昶は思わずといった風に呟いた。
「何がです?」
「うぉっ!?」
隣に居ると思っていた相方が、突然背後から首を突き出して来る。
彼の白い髪が頬を掠めた。
「ああ、クリスマスですかー・・・未だ11月のはじめだというのに、気の早い事ですねぇ・・?」
そして彼もソレを見上げて、少年と同じ感想を抱いたらしい。
「日本て凄いよな、こーいうトコ。しんせーさも何も無ぇバカ騒ぎにしちまう」
自分も日本人である事を棚上げ・・・するワケでも無いが、そんな言葉が口をつく。
ちらり と背後にある通りのショーウインドーにも目をやる。
「ま、売る側の考えか・・」
其処には前方の巨大なクリスマスツリーを縮小した様な、家庭用のクリスマスツリーが、ちょっとした並木道を作っていた。
白銀はそれを眺めながら・・・
邪気の無い様な笑顔を造った。
そして間も無く、家に帰り、昶の自室に入った途端。
白銀がおずおずと、しかし一息に切り出した。
「昶君、前借りさせて下さい」
「・・・はい?」
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