お話

□初めての君
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響く

響く 響く。


「いないのかー?」

(居留守だ)

「いるんだろぅ?」

(だったら どうした)

「出てきてほしい、一度話がしたいんだ!」

(エスパーかお前!)

折りよく、 まるで自分の思考に返すような叫びに、心の内だけでそう返す。
どうやら元々は堅めの口調らしいが、大声で響かせるように叫んでいるため、何処か抜けた印象がある。

その大声の主は、何か真っ黒でフワフワで、フラフラとあっちこっちを漂うように・・・白い王を探しているらしかった。

(何だアイツ?黒いのが超進化したのか?)

シャーとかシェーとかしか言わない。自分の下僕、黒いヤツの親戚かという考えを、一瞬本気で巡らせる。

いや、しかし。感覚的には・・・白いヤツに似ている・・・

まさか、俺が今までバッサバッサ ザックリと狩り続けてきた奴等が・・・御礼参りに来た・・・とか

(・・・あり得ん)

「・・・あ」

白いヤツと似ている・・・ということは・・・
『彼方側』から来た?

もう一度、じっくり観察する。

世界から

此の世界の 調律者 として、世界と一体となるように同調。

その目で 視る。




光が在った。

ハクアとは比べ物にならない程の、瞬くこともない、 完全な 光。

影の世界において、明らかな 異質。
他に類を見ない、異質。

(いや、違うか)

白い王は思う。

(俺も・・・)

と。

此の、自分が属する影世界にあってさえ、同じモノのない。

完全すぎて異質な影。

世界そのもののようでありながら、馴染むことはできない。

最初から其処に在るというのに、周囲と同じになることは叶わないとでも言うような。
言葉では形容し難い、
矛盾。




故に、

認識した、其の存在を。

理解した、彼の者を。


呆然としたまま、無意識に、一歩

踏み出そうとして・・・

「私は劉黒という!」

その声に、はたと 足が止まった。

意識が覚醒する。

(りゅーこ・・・ 名前?ヒトみたいだ・・・)

それがどうした、速く行け。
いや、それこそ。何にしたってわざわざ会ってやる理由はない・・・

名前、名前・・・会ってやる?あいつが会いたいのは・・・

誰だ?

ふと、彼を見やる。
目があった、気がした。気がしただけだった。
彼は此方に気づかず。依然、周囲に首をキョロキョロ、時に体ごと回って

誰かを捜す。


赤い 紅い 朱い瞳。

そこに 誰かを 映したいと。

誰を?

疲れたのだろう、彼はふと俯く。
瞳が、あの色が、

黒い睫毛に、

隠れて、

「・・・っ」

白い王は踵を返して、 その場を後にする。

りゅーこ。

「劉黒」

白い王がポソリと呟く。
低く、小さく、かすれた声で。
誰にも聞かれないように。



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