お話

□大人買い
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「・・・で、何なんだよ?」

昶の部屋。その床に後ろから昶を抱きかかえて座る白銀へと、抱かれる昶は後ろへ首をひねって質問する。

何故? と。

「・・・いえ。まぁ、ちょっと・・・復讐です」

「は!?」

突然に抱き付かれ、訳の分からない状況に戸惑っていたところへ、不穏な言葉を投下される。

当然、昶はますます狼狽えた。

「何だよ、それ。誰に・・・? てか、俺に抱き付くのが何で復讐になるんだ?」

自分は何時から、そんな使用法も知れない兵器になったのか。

「あー・・・。復讐・・・は言い過ぎでした。
要するに、子供の頃出来なかった 大人買い とか・・・」

「訳判らん」

少年は即、一蹴する。

「・・・でしょうね」

苦笑する白銀。

(自分でも・・・)

「大体、お前に子供の頃とかあったのか?」

「・・・まぁ、圧倒的に経験不足・・・という時期ならあったでしょうね」

「ふ・・・ん?」

昶には、よくわからない。

そして、白銀も思う。

(やはり 自分でも・・・)

ふと。抱き締めた昶の首筋に目がいく・・・と言っても目の前だ。

何となくそのまま、そろりと其処に顔を沈めていく。

ゆっくりと。

想っていた以上に置き心地(?)が良い。

頭部をしっかり固定する。

何だか分かりづらい空気に、跳ね退ける事も出来ず。くすぐったい そう漏らしている昶の声は全無視する。

昔、洸はよく劉黒のここに顔を載せていた。

二人の身長に大差はなかった。前からでも、後ろからでも。抱き付けばここが一番目について、預けやすかったのだろう。

(何気に落ち着くな・・・この体勢)

思えば、洸は劉黒にベタベタだった。

・・・ベッタベタだった。
自分の王だというのに、膝枕させたり。
そのまま腰に抱き付いたり。

劉黒も限度を越えない限り、それを叱ったりはしなかった。

その『限度』も恐ろしく高いところに設定されていたのではなかったか・・・

きっと、二人は親子だったのだろう。

(なら、俺は?・・・俺達は・・・)

対・・・対とは何だ?

「昶君・・・」

昶の肩に顎を載せて白銀は言う。

「私は・・・おそらくは洸も。貴方が劉黒の因子を受け継いでいるから、関わりました」

昶の肩がピクリと揺れる。

ここにいると相手の心も解りやすいのだろうか・・・

「私などは特に。
貴方に因子が無ければ、一目見やることも無かったでしょう・・・」

何を言いたいのか・・・

「白銀」

昶が、呼びかける。

ぽつりと、しかし はっきりと。

何を言わせたいのか・・・

「お前はお前。洸兄は洸兄。・・・劉黒は劉黒で、俺は俺だ。
それをこれから証明していく。
俺は自力で、ここに・・・」

べりっ と自分から白銀の身体を剥がし、その胸を示す。

「俺を置く」

何を言ってほしいのか・・・

「お前達がそうしてきたように。
やられっぱなしは性に合わねぇからな」

最後には、勝ち気そうに笑ってまで見せてくる。

ああ。この顔は好きだなと思った。

このお気に入りを、今度は守り通せると良い。

きっと本人はまた勝手にウロチョロするのだろうけど。

劉黒は劉黒。この子はこの子でまた、愛しいものだ。

彼の因子も、この子も。
まとめて大人買い。

もう決めた。
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