お話
□『良い朝』
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ベッドの上で意識を覚醒させると、髪の毛を断続的に引っ張られていると感じた。
一摘み、一束というレベルではなく。豪快に、全体的に。
だが痛くはない。むしろ撫でられているようで、どちらかと言うと心地良い。
「・・・・・・?」
「あ、劉黒。やっと目ぇ覚めた?」
どうやら 自分の後ろに居る洸がやっていることらしいと気づき、劉黒は首を捻って彼を見やる。
「もうちょっとだから!」
『何が』と尋ねる間も無く、彼の両手で顔を前に戻された。
ふと、その右手に握られている物に気がつく。
「・・・・・ブラシ・・・」
目に入った物の名前を、そのまま ぼんやり口にする。
「そう、たまにはこういうサービスもしてみようかと思ってさ」
ただ起こすだけなんて芸がないしねぇ・・・そんな事を言っている洸に、
やっと、 髪を梳かしてもらっているのだと理解する。
「はいっ、出来たよ!」
どこか楽し気な その声に。
彼に振り向いて、やはり楽し気なその目を確認しながら
「ありがとう」
そう返す。
彼を子に迎えて良かったな。
ぼんやりとそんな事を考えながら。
だって、
たった此だけで こんなにも『良い朝だ』と思えるから・・・。