お話

□愛を告げる時
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「・・昶君・・・」

「・・・ぅあっ!?」

いきなり 後ろから抱き竦められた。

(またかよ・・・!)

突然の事に、バクバク暴れる心臓を必死に宥める。

「今度は何だよ?」

正直。先刻の事も結局分からず終いだった気もするが、それ以外に聞き様が思い付かない昶はそう問い掛ける。

「君達は可愛いですね」

「・・・・・はい?」

突然何を言い出すのか・・・

(・・・てか、『達』?)

「そして 当然の様に君は綺麗です」

「・・・あー・・?」

何と返せば良いのか・・・

「当然の様に 自分の存在を悩んでいる」

「・・・悪いかよ・・」

何となく、唇が尖ってしまう。

「良い悪いではないんですよ。自分で決められる事でもないという事なんです」

「・・そうかよ・・」

「ええ・・・『正しい答え』なんて何処にも無いというのに。
在るとしても、それこそ最初から決まり切っているというのに」

(ただの言葉遊びだ・・)

「それでも、解答欄の空白に耐えられず。
自ら進んで苦痛の真っ只中にその身を投げ入れる」

(ずっと そうして生きて来た『君達』)

だから。

「君よりずっと年長な私が、とっても分かり易い助言を差し上げましょう」

そのくらいは させて欲しいと 意地っ張りな少年を抱いている腕の力を、ほんの少し強くする。

「可能な限り、心を鎮めて。周りを見て御覧なさい。ゆっくりと」

(教えてと 叫び疲れたなら、その分心静かに 耳を澄まして・・)

そう言っているのに、昶はじとっと白銀ばかり視ている。
その様子に つい、笑みが深まってしまう。

「幼いプライドも、歪な謙虚も。今だけは脇に置いといて下さい」

誇り高く、自信に溢れる姿が人々を魅了するように。
謙虚な姿勢で、精進する姿も また、美しい。

けれど、今。
そういったモノは、寧ろ邪魔になってしまうから。

腕の中の少年は、怪訝そうにこの眼を覗き込んで来る。


――― 教えて ―――

そう叫んでいるのが分かる。
きっと 苛めすぎたのだろう。

(でも、仕方なかったと言い訳させてくれないか)

昔からの知人と、永い時を経ての再会。

(初めてだったんだ)

柄にもなく動揺して。
けれど、触れ合う程に『彼』ではないのだと認識させられて。

「先程は『あのように』言いましたがね? 今は洸も、賢吾君も綾さんも。みんな、君を見てるんですよ」

それが 君が此処にいるという何よりの証。

愛されているから・・・

ありきたりな言葉の何が悪い?

相談するのは悪い事ではない。
君がそれを望むように、愛しい人に頼って欲しいと
誰もが願う。


そう言ってみれば、ピクン と腕の中の命が強張った。

(気付いていないとでも思ったのか?)

思わず、零れまくりの笑顔。

「・・・白銀も?」

愛しているモノを、同じくらいに愛しているモノと比べてしまうのは。
ある意味、仕方ない。
それは『自分』を知る為の行為でもある。

「はい、勿論です」

自分に何が必要か。
そんな事は他人に尋ねるような事でもないと。
そんな事は誰だって分かっている。
それでも聞いてしまうのは・・・


自分に何が足りないのか、そんな事 尋ねた時点で『負け』だと少年は思っていた。

(だって そんな事したら・・)

「・・・白銀は・・・」

『好きになって』と言っているようなものではないのか・・・?

「・・何でしょう?」

相手の手をとって

「・・俺でも・・良いのか?」

その瞳だけを見つめて

















それは まるで ―――――











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