お話

□君を見る
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「この阿保、馬鹿、糞餓鬼」

つらつらと罵りの言葉が零れる。
そんな白銀の頭の中では、今更になって 先の劉黒の言葉が意味も無く 繰り返し響いている。

『好きだよ』

ぎゅっと抱き締めて、
絶対離さねぇゾ、コラ。
と体全体で言いながら 白銀は言う。

「光がないと真っ暗だ」

と。なのに、劉黒は返す。
だが・・・と。

「近過ぎると眩しい」

眩しいと人は 目を瞑ってしまう。
それでは 相手の顔を見ることも出来ない。

「暗闇でも同じだろうが」

誰も、暗くて冷たい場所を好んだりしないだろう

「闇が冷たいと誰が決めた?」

劉黒は抱かれる事に抵抗するどころか、進んで白銀の肩口に自らの額を押し付けた。
黒い髪がさらりと垂れて、小さな灯りの光も遮断する。

「人は 闇に目を凝らす事はあっても、眩しい物からは目を背けるものだ」

だから・・・嫌われるだなんて思った?

ふわりと、柔らかな黒髪が鼻を掠める。
ひどく近いところに 彼の顔が在った。

「ああ、そうだ・・・だが、其の様子だと・・・」

恥ずかし気に頬を紅らめているのを見て、可愛いなと思わなくもなかったが、

「私の早とちりだった様だな・・・?」

最後の とろける様な笑みの方が、
記憶の中で 強い。

やっぱり まだ、もう少し 此処に居たい。

そう言ってまたベッドに腰掛けながら、突っ立ったままの白銀を見上げて劉黒が言う。

真っ赤な顔で



「私は 白銀が 好きだぞ?」

視線が外される事は無い。












さて、何か 言う事は・・・?












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