お話

□幸せの呪文
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「白銀、好きだ」

「俺は劉黒が好きだ」


好きだ と言うと、彼は決まってそう返してくれた。

俺はお前が好きだ と。

そうなるまでは、顔を真っ赤にして

「いきなり阿呆言うな 阿呆! 糞餓鬼か!?」

とか怒鳴られていた。

もう慣れてきたのか、最近は『そこまでは』赤くならずに『素っ気ない風に』返事をくれた。

つまり、『俺は・・・』と。




ふと、何時だったか。
大分 前に読んだ人間の物語を思い出した。

男が恋人に愛を告げると、相手は 私も・・と返すのだ。

『私も・・』 と。




「・・・・・」

「・・劉黒?」

黙考していると、私の顔を白銀が覗き込んで来た。

「どした・・?」

「・・・白銀」

「うん?」

「好きだ」

「またかよ!?」

結果的に、効果的な不意打ちとなったらしい。

白銀の顔が懐かしい加減で赤くなった。


「・・お前、意味も無く突然其れ言うのはやめろっつったろうが?・・・俺はお前が好きだ」

「白銀・・」

「だーかーらー!」

「白銀は自分の事が好きではないのか?」















本の中の恋人達は決まってこう答える。



『私も』







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