お話
□三人と一羽の旅路〜夢見る頃を過ぎても〜
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「今日が何の日か・・知ってるか、駄犬?」
白髪の王様が唐突に、意地の悪そうな笑みを其の顔に貼り付かせて駄犬こと洸、俺(は絶対にこの呼称を認めないけど・・)にそう訊いてきた。
「・・はい?」
それは、朝も早くに呼び出しをくらい、しかも相手が己の対人関係において不仲の代表格たる白銀であるという事に、不満を禁じ得ない俺にとっての最大限に棘の無い返事だったさ。
というか、あの時の俺はどうかしていたと思う。
自分で言うのもアレだけどね?
素直だったなぁ・・と。
てかね、素直過ぎたよなぁ・・とか、思うわけです。
「何だ、知らねえのか?」
にたぁり・・と、其れはもう、『悪の権化此処に在り』みたいな顔で笑ったもんだよ、アイツは。
「・・・端午の節句。こどもの日・・?」
一応、常識的な答えを返しておく。
すると、白銀はほんの少し、感心した様な響きのある声で小さく、知ってたのかと呟いた。
「らしいな。そんなワケで俺からお前にサプライズイベントだ」
何かおかしな事を言い出した。
「パーティーでもプレゼントでもなくて?
てか、『そんなワケで』ってどんな日だと理解してるワケ?」
念の為に確認が必要だと直感したんだ。
どうせなら此処で、危険を察知して逃げの一手を選択出来てれば・・と、今になって思う。
「子供の成長を促す為に試練を課して例えば崖から突き落とす日」
生きて帰ってきたら一人前と認定的な?
もうそれ『こどもの日』じゃなくて『成人の日』じゃねえか。
儀式じゃねえか。
しかも恐ろしく前時代的な。
こどもライオンが頑張る映画でも観てきたのだろうか?
因みに、以下が『こどもの日』の本来の解釈だよ。
『子供の人格を重んじ、子供の幸福をはかると共に母に感謝する日』
覚えておく様にね。
(・・・清々しい程に乱暴な曲解したなぁ、白銀)
てか、つまり・・
「ま、そんなワケで俺からお前に『素敵☆試練』だ。有り難く受けて逝け」
わー・・『殺る者の目』だぁ☆
『ヤバい、逃げなきゃ』そう察した時には、俺の身体はもう、如何にも怪しい煙に包まれていたんだ。
あの日。
茜色に染まった空を、俺は飛んだ。
高く、彼方へ。
――― 三人と一羽の旅路〜夢見る頃を過ぎても〜 ―――――――――