一冊目

□拍手内からのリクエストF
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その時、思った事は・・・


ああ、自分は光に成るんだな・・。


其れだけだった。

後は、事が進むべき方へ進んだ事への安堵と、少しの・・・ 誓ってほんの少しの寂しさを感じて・・

俺は自分の中から

溢れてくる

生まれてくる

光に包まれて、この目を閉じた。


何故か、眩しくはなかった。













そして今。

自分は、

世界と共に在りながら、

その中には居ない。


居られない。






―――世界と共存―――









・・・あれから、どれだけの時が流れただろう?

賢吾も綾も、もう居ない。

ほう と溜め息が落ちた。

久々に『あの頃』を思い出していた。

今日の忙しさが少し、あの頃の一日に似ていたからかもしれない。

そんな事を意味も無く考えていると、後ろから声をかけられた。

「どしたのー?・・・疲れたかな、久し振りだったものねぇ・・白銀も 騒がしいのを『子』にしたもんだね・・・ねぇ、アキ?」

そう思わない?
嫌いじゃないけどね。

そう言って笑う声の主は

「・・洸・・・」

相変わらず一見軽薄そうな笑顔を浮かべる彼は、
ヒラヒラと昶の目の前で手を振る。

「大丈夫?こんなトコで、一人でボサっとして。
・・・まぁ、アキがボーっとするのは珍しい事でもないかな?」

その言には曖昧に頷いておいて、彼の笑顔をじっと見てみる。

そして 記憶をあさる。
自分が覚えている限りの『自分の記憶』を。

改めて見ていると、気を抜けば涙が出そうなくらい 変わらない、懐かしい顔だと気付く。

ずっと居てくれる。

支えてくれる。

彼に

「・・洸兄」

「何かな、アキ?」


言うべきは



「ありがとう」


其の突然の謝辞を、目を丸くして受け取る洸。

数瞬の間をおいて、彼が 何か言おうと口を開きかけた時。


「・・・!・・・っ!?・・」


少し離れているからだろう。
二人は大声だとは判るが、聞き取るには難しい話し声が、自分達に近付いて来ている事に気付いた。





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