novel

□A Little Bitter
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 抜き打ちテストが終わり、ホッとするのもつかの間、来月にやってくる入試前の模試に俺は頭を抱えていた。
「この模試は君たちの志望校への合格を決める最後の砦です。」
 担任の志摩裕が再三再四言ってるけど、俺だってそんなコト分かってる。だから、塾だって毎日サボらず通ってるし、最近は授業態度も(俺にしては)随分いい。(現に「再三再四」なんて難しい四字熟語を何気なく使っている!)
 問題は、「努力が実力に表れない」ということだ。
 他の奴と同じくらいの時間を俺は勉強しているつもりだ。いや、下手したらそれ以上か。
 とにかく、俺は精一杯頑張っている……はずなんだけどな。
「行道くん、また六十点代なの?」
 結依が呆れた顔をして俺の答案用紙を覗きこむ。
 そう、俺は何故か思ったように点数が上がらないのだ。
 俺よりもかなり馬鹿だったはずの奴にさえ、既に点数は追い越されてしまっている。
「……数学が唯一の頼みだったのに。」
 俺は大きな溜め息をついた。
「行道、
観念して志望校を変えないかい?その点数なら他の高校だって充分狙えるよ。」
 裕も溜め息をつきながら俺に言った。
 そう、別に志望校にさえこだわらなければ、俺には他に行ける高校がある。だが――
「そういうわけには、いきません!」
 ぐったり落ち込んでいた俺の瞳に光が宿る。
「俺は何が何でもこの高校に行って見せます!今日からもっと勉強時間を増やします!」
「そんなに結依と同じ高校行きたいの?」
 後ろの席から沙也加が茶々を入れてくるが、無視!
 結依が小さく溜め息をついた。
「仕方がないわね。行道くん、私が勉強見てあげる。」
「へ……?マジかよ!」
「大マジよ?」
 結依は頭が良い。学年でもトップクラスの成績の人間だ。
 俺が感謝の涙を流していると、裕がぼそりと呟いた。
「結依に教えて貰うのか……こりゃ、血を見ることになるかも知れないね。」
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