novel

□BEST FRIEND
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「…れ、レンさんっ!」


半分裏返った様な、耳障りな声が裏路地に響く。
目前の見知らぬ男は、何故か俺に向けて目を輝かせていた。


「……あ?」

少し苛立って適当に返す。
先程まで俺は、息抜きにとスキューヴで外を走っていた。
途中立ち寄った店から出た刹那、この金髪の男が俺を見るなり勢いよく駆けてきたのだ。

「レンさんですよね!?」
「……。」
…煩い。

俺は面倒と思いスキューヴに跨がる。
「人違いだろ。」
男にそう言い放ち、アクセルを踏んだ。
こういうタイプとは性に合わない。それに、凄く面倒な気がした。──が、次の男の叫び声によって、俺は直ぐ様ブレーキを踏むことになる。

「ちょと待っ…、俺ですよ!俺!!ジャックです!!!」

どうやら知り合いのようだ。
俺は「はぁ、」と聞こえるようにため息を吐き、スキューヴから下りて背をもたれかける。
それを見たジャックという男は、走ってこちらまで来た。
軽く息を切らして膝に手をつき、苦笑いで視線を向ける。

「やっと停まってくれた…何で逃げるんですか」
「…いや、誰。」

ガクンと肩を落として落胆するジャック。記憶に無いですか…と力無く呟いた。

「ほら、この前の酒場で…」
「あぁ…」
あの喧嘩吹っ掛かてきた奴か。
だいぶ容貌が変わっていたので気づかなかった。

「思い出しましたか!ま、解らなかったのも当然ッスね。俺、レンさんっぽくイメージ変えてみたんス!」
「……。」
俺はお前をボッコボコにしたのに?
思わず鼻で笑ってしまった。

「全然俺っぽく見えない。」
「え!まじすか!」
何故そんなことをしたのかは何となく察したので、あえて何も訊かなかった。

よく解らない奴も居るなと、つくづく感じる。

「レンさんが来そうな場所捜し廻って、やっと見つけたんで嬉しかったですよ!…俺、レンさんの友だ…「鬱陶しい。」

「……え?」

「…敬語、鬱陶しい」


それ以上は面倒なので以下略。
俺は再びアクセルを踏んだ。
後ろで慌ただしくスキューヴに乗るジャック。
「ちょ待っ、レンさ…、レン!」

後ろに笑いを含んだような叫びが聞こえる
近辺の住民への配慮など、少しも無いらしい。


友達なんて必要ないと思ってた。
一人じゃ生きれないような野郎と過ごしても楽しい訳が無いと思ったからだ。

けど、たまにはこんな馬鹿な奴が居ても悪くはないかもしれない。

俺はジャックのスキューヴが追いつくまで、速度を落とした。


fin
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