novel

□星降る夜の物語
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とある夏の日、現在時刻は8時30分。
リューンは目の前で何かの書類を黙々と書いているエルムを見、困ったように溜息をついた。
「・・・エルム、さっきから言ってると思うけど、」
「やだ」
きっぱりと書類から顔も上げずに言い切った彼女に、リューンは再度深い溜息をついた。
「お前、ここのところ連日朝から晩まで任務やったり報告書書いたりしてたんだろ。元々体だってそこまで強くないらしいし、休める時に休め」
「あたしそこまで虚弱じゃないもん」
「・・・クレアが言ってたから信憑性はある」
リューンの言葉に、それは正確だと言いたそうにエルムの眉間にシワが寄った。
「まあ、クレアはちっちゃい頃からお世話になってたからねー・・・」
「だから休めってさっきから言ってる」
「でも書類も終わらないんだよ」
「・・・僕達がペアで任務に行った時のくらいは僕が書くから、その間だけでも寝てろ。この前みたいに目の前で倒れられたらびっくりするし」
「・・・そんな前のこと引っ張り出さないでよ」
「たかが一ヶ月くらい前だろ」
「・・・・・・今日のリューンは意地悪だ」
人聞きの悪いことを言うな、と思いつつそれが拗ねただけということは短い付き合いながらも理解していたので、近くのソファーに掛かっていたタオルケットをエルムに投げた。
「ん・・・ありがと」
もぞもぞとエルムはソファーに横になり、リューンも何となく床に座ってそのソファーに背を預ける。
部屋には書類にペンを走らせる音が響いた。
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