bruyant

□5月、出会い
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「あー……暇だ。暇」
「仕方ねぇって、な? ランちゃん?」
「ランちゃん言うな。不良が」
――――朝霞東高校生徒会室。広い机の上に頭を置き、暇だと言い続ける少年、『ランちゃん』こと京極 嵐山(キョウゴク ランザン)。嵐山の隣で黒髪を金色のメッシュで染めた前髪を指に巻きながら嵐山の背中を励ますように叩くのは『不良』こと琴平 泰志(コトヒラ タイシ)。
「まあ、確かに暇だと言えば暇だな」
 納得したように頷きながら、自分達の正面で嵐山と同じく机に突っ伏せて寝ているふわふわとした茶髪の少年に目をやる。
「なんか面白いことねぇかなぁ……」
 嵐山が、生徒会室の出入口に目を向けたその時だ。
「あのぉ……」
 少しだけドアを開け、中の様子を見ている少女が立っていた。
「生徒会の方……」
 そこまで言うと、少女は三人に順番に視線を送る。
「……なわけないか」
 少女は一人納得したように呟き、パタリとドアが閉まった。
 生徒会室に訪れたしばしの静寂。それを破ったのは勢いよく立ち上がった嵐山だった。
「おい! 見たかさっきのナイスリアクション!! このメンツをみて生徒会とは認めない常識人がついにやってきたぞ!」
「……それは馬鹿にされてないか?」
 泰志の言葉を聞かなかったことにし、嵐山が勢いよく生徒会室を出、先程の少女を追いかけた。
「ちょっとぉ! 待って! そうそこの君!!」
 放課後という時間帯だということもあり、周りには誰もいない。そこの君呼ばわりされた少女はその場に立ち止まった。
「ね、生徒会に何の用だったの?」
「あ、いえ。これからの私の高校生活を考えたら頭痛くなって……」
「は? とりあえず保健室行く?」
 黒い髪を左側に一つに束ね、髪の色と似た瞳で嵐山をじっと見つめる少女。
「……あの、そんなじっと見つめられても……」
「あ、別にカッコイイなぁとか思ってませんから」
 スパッと言ってのけた少女にの言葉に、笑顔が引きつる嵐山であったが、その笑顔を保ち、もう一度少女に声をかけた。
「じゃあ名前は?」
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