bruyant

□5月、出会い
3ページ/5ページ

「……羽月嘉穂(ウヅキ カホ)です」
「あー……今日転校してきた秀才って君のことか」
 今日の友人との会話を思い出し、納得したように手を叩いた。
「あなたは……?」
「あ、オレは京極嵐山!」
 再び嵐山を見つめ、嘉穂は思い出したように口を開いた。
「ああ、あのヤク……」
「いろいろ言いたいことはあるだろうが名前だけでヤクザと判断するな」
「……一応自覚はしてるんですね」
 ボソッと呟いた嘉穂に、二度目の苛立ちを覚えた嵐山。
「っていうかさ。なんでオレのコト知ってるんだ?」
 そんなにオレは有名か〜、と満足気に頷く嵐山だが、そんな嵐山を残して嘉穂は来た道を戻っていった。
「おいっ!! 無視はねぇだろ!? っていうか帰るんじゃなかったのかよ!」
「……先輩の名前を聞いて生徒会室はあの場所だと分かったので。残念ながら」
「残念ながらって何!? そんなにオレらのことが嫌いか!」
 すたすたと歩く嘉穂の後を走って追いかけた。
「私面倒なことは苦手なので」
「おーい、心の広いオレの前でだからいいけどな、他の奴の前でそういうこと言うなよ〜」






 戻ってきた嵐山が、生徒会室のドアを開ける。
「あ、ほらな。言った通りだろ?」
「うっわーホントだ。ランちゃんが女の子誘拐して来てるー」
「ランちゃん言うなっつってんだろ落書き魔が。んで誰が誘拐したって?」
「だって泰志君そう言ってたよ」
 明らかに増えている人を見、ため息をついた嵐山だったが、嘉穂の腕を引き生徒会室の中へと入れた。
「……とりあえず紹介するぞ、落書き魔の会計担当の……」
横の方をピンでとめている茶色い髪の少女が、持っていたペンを置き手を挙げた。
「ハーイ♪ 二年A組の小野田沙希(オノダ サキ)です☆」
(……明るいなぁ。友達とか多そうだし)
「んでその隣の不良が……」
「あ、三年B組の琴平泰志。ちなみにサッカー部部長な」
(あ、さっきの不良だ……絶対スポーツなめてるな)
「で、そこの生意気メガネが……」
「議長を務める二年A組東竜(アズマ リュウ)」
さりげない嵐山の嫌みにも動じずに、キーボードを打ち続けている。
(……無口だ。こういうタイプは苦手かな)
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ