bruyant

□屋上、昼食
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「……琴平君ゴメンね」
「ああ……いいよ」
 落ち込んでいる弥生にそう言って笑顔を向けると、泰志は制服のポケットから携帯電話を取り出した。
「…………あ、今暇? じゃあ購買で適当にパン買って屋上まで持って来い」
 嘉穂は明らかに一方的な発言をして電話を切った泰志を見つめた。
「……琴平先輩、そんなこと言っていると孤立しますよ」
「もうしてるっつーの」
 小さく呟いた嵐山に箸を投げ付けた泰志。
「痛いだろうが! この不良がっ!」
「だから不良じゃねえって言ってるだろうがヤクザが!」
 言い争う二人の間に割って入るように嘉穂が座る。
「組同士で争わないで下さい」
「組って何? オレらクラスメートだぞ? だからヤクザは関係ないって言っているだろ」
「自覚しているんですね。そうですよね? 先輩」
「寄るな!」
 嘉穂は自分が近づく度に後ろへ後ずさりする泰志の顔が赤いことに気づく。首を傾げると、沙希が卵焼きを食べながら笑顔で言う。
「泰志君ね、女の子苦手なの。アタシや弥生先輩に慣れるのにも時間かかったからね」
「な? おかしいだろ? 不良のクセに」
「……そこのヤクザ、後で覚えとけよ」
「何か嫌な思い出でもあるんですか? 不良のクセに」
「おい羽月、お前もだ」
「琴平先輩、一年の人が呼んでますけど」
 いたのかお前、という嵐山のいつもの嫌味は聞き流し、竜が泰志に手招きする。
「琴平先輩っ!」
 元気のいい声につられて勢いよく立ち上がった泰志は、数人で入口に立っている後輩の元へと駆け寄った。
「おー荻原、何を買ってきた?」
「琴平先輩の好きなメロンパンですよ!」
 案外可愛らしいものを好きになっているな、と呟いた嘉穂。
「おー! さすが俺の後輩だ。これ、金な」
「先輩のためならそのくらいいいっすよ!」
 後輩の一人に、お金を握った手を押し返された。その嬉しそうな声に、一同は泰志の方を見つめた。
「そのかわり……」
 パンを受け取った泰志を見つめる後輩達。そのうちの一人が、顔の前で両手を合わせた。
「僕達の練習、指導して下さい!」
 一人につられて残りの数人もお辞儀をする。泰志は笑いながら最初に頼んだ荻原と呼ばれた後輩の頭を乱暴に撫でた。
「んなことだろうと思ってたっつーの! いいぜ、じゃあ放課後に誰よりも先にお前ら練習してろよ? この俺に指導して貰えるんだ。体つくっとけよな」
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