Novel = short=

□◆その手を繋いでキスをして 中編
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昶達が洸から連絡を受ける20分前―――。


洸は久方振りに仕事がなく、自宅で体を休めていた。

そこへ聞こえてきた鈍いドアのノック音に、洸はソファーに横たえた体を起こす。

(…この時間に来る奴となると…アキ達か?)

やーさんに嗅付けられるわけないしなぁ…と思いながら、洸はドアに近寄っていく。

「ハイハーイ、どなたかなっと…」

ドアを開けた先には、どこか沈んだ面差しをした、馴染み深い金髪の少年の姿があった。

「ケン…?」

「洸兄……あの…」

上目遣いで名を呼び、何事か言おうとした筈の唇はただ震えるだけ。

数日振りに会った賢吾は今にも泣きそうな顔で、途方に暮れたようにその場に立ちすくむ。

その様子を見て、洸は彼の頭にポンッと手を置いた。


「入りな、ケン…。話、聞いてあげるから」

『ね?』と優しく微笑む洸を見上げて、賢吾はコクリと頷いた。


――――……。


「ケンー、コーヒーでいい?」

「…あ、うん……」

適当なソファーに賢吾を座らせ、洸はキッチンで2人分のコーヒーを淹れる。

その間も賢吾は顔を俯かせ、フローリングの床を見つめてばかりいた。

(……アキと喧嘩…にしては、沈み具合がいつもと違うね…)


どうしたものかと思案しつつ、洸は賢吾に近寄りコーヒーを差し出す。

「ほい、砂糖入りね」

「あ、ありがと…洸兄…」

どこか無理をして浮かべた笑顔が痛々しく、洸は僅かに顔を顰めて隣に座った。

「どうした?アキと喧嘩?」

その問いに賢吾は首を横に振る。
やはり違うようだ。

「…何があった?……お兄さんに話してみなよ?」

「……ッ…」

賢吾は何か言いかけては、また口を閉ざすの繰り返し。

洸が辛抱強く待っていると、賢吾はおもむろに口を開いた。
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