ハリポタ2

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夜も更けたグリフィンドールの談話室。
最後まで不慣れなレポートに苦戦していた一年生があくびをしながら部屋へと帰っていくのを見計らって、ジェームズはポケットから羊皮紙の切れ端のようなものを取り出した。
彼はテーブルの上にそれを広げると杖で2、3度叩いて、それからその羊皮紙の隅々にまで目を巡らせた。


「何してるんだいジェームズ?」


気付いたリーマスが同じように羊皮紙―忍びの地図を覗き込んだ。
消灯時間まではまだ少し時間があるせいか、廊下を歩く生徒の足跡が記されている。
ジェームズはニヤニヤしながらその足跡の中のひとつを指差した。


「これだよ、これ。」

「これってなまえと…エルバート?2人はスラグ・クラブに参加しているはずだろう?なんでこんな所を歩いているんだ?」

「ふっふ、そんなの決まってるじゃないかリーマス。」


ジェームズの含み笑いにリーマスは合点がいったように「ああ」とため息とも相槌ともつかない声を漏らした。


「シリウス敗北決定か。」

「まあ正直そうだろうなとは思っていたけど、意外と早かったね。」

「で、シリウスはどこだい?」

「えーと…」


2人はなまえにプディングを届けに行ってまだ戻ってこない友人の名を探して地図を覗き込んだ。
なまえといっしょに居るのがエルバートということは、もうシリウスは寮に帰ってくるはずだ。


「何見てんだ?」

「「うわっ!!」」


突然、背後からかけられた声とぬっと現れた影に、図らずも2人は声を揃えて驚いた。
振り返ればそこには2人の驚き様に逆に驚かされたシリウスがいた。


「な、なんだよ。」

「い、いや何でも…戻ってきてたんだねシリウス。」

「おう、たった今な。…ジェームズは何隠してんだ?」

「!」


反射的に両手で地図を覆い隠していたジェームズは、シリウスに気付かれないようにこっそりとそれを仕舞おうとしていたが、努力むなしくシリウスに見つかってしまった。


「なんだ、忍びの地図じゃねえか。」

「あ、いやシリウスこれは……」


あっという間にシリウスはジェームズの手から地図を取り上げた。
地図に記される名前はとても小さくてよく探さなければなまえとエルバートが一緒にいることは分からないはずだが、それでもジェームズはシリウスがそれに気付いてしまうのではと冷や汗を流した。
そんな彼の気も知らず、シリウスは何か面白いことでもあったのかと地図に目を巡らせていく。
そして件の2人がいる所にシリウスの視線が注がれようとしたその時、寮の玄関である太った淑女の肖像画が勢いよく開き3人の意識はたちまちそちらに持っていかれた。
開けたのは額に汗を浮かべ肩で息をするリリーだった。


「リリー!どうしたんだい?スラグ・クラブは?」

「ジェームズ…リーマス…それにシリウスもいるわね!ちょうどよかった…!」


リリーは乱れた呼吸を整えながら鋭い目付きで3人を睨んだ。
しかし彼らにはそんな目でみられりる訳も、ちょうどよかったという言葉の意味する所も分からない。
分かることはただリリーがこんなに取り乱すなんて尋常じゃないということだ。


「一体何があったんだいリリー?」

「分からないわ…なまえがエルバートに連れていかれて…それでなまえが危ないって……!」


その瞬間、シリウスは地図の上になまえの名前を見つけた。
それと同時にエルバート・カーティスの名前も。
ちり、とうなじの焦げるような感覚に突き動かされ、シリウスは走り出した。


「きゃっ!」

「おいシリウス!?」


呼び止めるジェームズの声も気に留めず、シリウスは開けっ放しの寮の穴をくぐった。
なまえが危ない。
その言葉だけが彼の頭の中でアラートのように鳴り響いていた。




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