ハリポタ2

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なまえが目の前から消えた直後、ヴォルデモートは体の自由を取り戻した。
石化の呪文をかけられたはずだったが、どうやらかかりが不充分だったようだ。
おそらく、なまえに残された力が残り少なくなっているせいだろう。

「馬鹿者が…」

自らの命の瀬戸際にあることを自覚しているのかいないのか、いずれにせよこの期に及んでまだ聞き分けのないなまえにヴォルデモートは悪態をついた。
自分を見つけてみせろと、なまえは言った。
この記憶の海のどこかになまえは隠れている。
ヴォルデモートは足元から光粒子を一握り掬い上げた。

「この俺様相手に賭け事だと?…ふん、勝負にもならんわ。」

そう言ってヴォルデモートは光粒子を宙にばらまいた。


******


目の前にいた卿が一瞬のうちに掻き消えた。
いや、違う。
掻き消えたのはどうやらあたしの方らしい。
あたしがいるのはさっきまでの何もない空間ではなく、見覚えのある豪奢な部屋。
卿の屋敷での、あたしの部屋だ。

「はあ、便利なことで。」

見つけてみせてといったものの、正直どうやってこの場所に来ればいいかわからなかったので助かった。
念じれば移動できる…ってことなのかな。
あたしは部屋の窓から外を見た。
いつも鬱屈とした雰囲気の漂うこの屋敷だが、昼間は少し季節感が伺える。
庭の乏しい木々に緑の茂る今は夏。
ここはあたしがこの屋敷を出た、まさにあの日だ。

あたしは曇天の隙間から漏れる夏の日差しに自分の手をかざしてみた。
細やかな日の光はこの小さな手のひらすら透かすには足りない。

「卿、来るかな。」

あたしは手を下ろして部屋のドアに目をやった。
開かれる気配はまだない。
あたしはあの日のようにベッドの上で膝を抱えてみた。
今思えば酷くいじけていたものだと、苦笑を漏らす。

卿は来る。
確固たる理由もなくそう感じていたあたしがすべきことは、ただ待つこと。
卿が来たらまずは何て言ってやろうか。
そんなことを思いながらあたしはゆっくりと目を閉じた。

日が傾いて部屋が少し暗くなり始めた頃、部屋の扉がキイと音をたてて開いた。



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