ハリポタ
□3
1ページ/3ページ
ここに来てから何だかんだでもうすぐ1ヶ月。
卿は今日も悪いことをしにどこかへ出かけている。死喰人でもないあたしを卿が連れて行くハズもなく、今日もあたしはお留守番。
先日猛抗議したので出かける前は予めたっぷりと魔力をくれるようになったけど、いつ切れてしまうかはイマイチ分からないから、結局、卿不在の時は少しばかり不安な気持ちで過ごすことになる。
「ヒマだね〜ルシウス。」
「同意しかねますね。私は暇ではありませんので。」
「え?なになに?何かすることあんのルシウスは。」
「薬草学のレポートです。誰かのせいで滞っていますので。」
「ふーん、大変そうだね。」
「自分で訊いたくせに人事ですね。」
今あたしと楽しく(?)おしゃべりしている彼はルシウス・マルフォイ。
今はまだ生まれてもいないドラコ・マルフォイの父親だ。
ヒマだヒマだと口癖のように言うようになったあたしに卿が紹介してくれた新米死喰人。
彼もまさか初仕事がこんな女の話相手なんて思いもよらなかっただろう。
「大体貴女も暇ではないはずです。我が君から課題を頂いておいででは?」
「あぁアレ?うん、もうね、ナギニに食べさせ………食べられちゃった。」
「なんてコトしてんですか。」
ルシウスの顔がサッと青くなった。
課題と言うのは例によって英語の勉強だ。
英訳だとか正しい発音だとか…Vの発音だとか。
でもぶっちゃけあたしはもうそんなもん必要ないと思っている。
なぜなら………
「卿が翻訳魔法かけてくれたんだから、いいんだよ。」
「そういう問題ではないでしょう……」
あたしは首にかけたネックレスをつまみ上げて振って見せた。
クリスタルの小さなハートモチーフ。これに卿が魔法をかけて、着けてる間は英語ペラペラになるようにしてくれた。(多分英語教えるの飽きたんだろうな。)
おかげで今やあたしは何の努力もナシにバイリンガルだ。
「教科書見せてー、ホグワーツってどんなことしてんの?」
「あ、コラッ!」
羊皮紙に必要箇所を書き写しているルシウスの横から教科書をひったくりパラパラとめくってみた。
なかなかグロテスクな図が散りばめられて、難しそうなことがたくさん書いてある。
「うわ、意外と難しそうだね。」
「いきなり7年生用の教科書を見て解るわけがないでしょう。」
「あれ?ルシウスって7年生?」
「?そうですが……。」
教科書を取り戻したルシウスは訝しげにこっちを見た。あたしはそっかそっか7年生かーなんて呟きながらソファへダイブする。
ルシウスが7年生ってことはジェームズたちもまだ在学中だよね。ってよく考えたらジェームズたちのがルシウスより年下なんだから当たり前か。
今何年生なのかなー、それ訊いたらさすがに怪しまれるかなー。
「ね、ね、ホグワーツって授業料高い?」
「……なぜそんなことを訊くのですか?」
「あたしもホグワーツ行きた「駄目です。」
全て言い終える前にルシウスは問答無用で切り捨てた。
「授業料なんて払えようと払えまいと、魔女の素質も無い貴女には入学許可なんておりません。第一、貴女は我が君から離れて生きられないでしょう。」
「うわーそうだったー。ねぇ、特別措置で保護者同伴通学できない?あたし卿といっしょに学校行くの。やべっマジウケる!!」
「ウケません。」
またも一刀両断。
アレだ。コイツとお笑いコンビ組んだらものっすごい頑張ってボケ続けないと間はが保たない。
アレ?この場合あたしがボケ?
「やだ、あたしツッコミがいい。ルシウスボケてよ。」
「何の話ですか。」
「なんでやねん!」
「………私は今何をツッコまれたんですか……」
呆れ果てるルシウスをほっといて、あたしはクッションを抱えてソファーに転がった。
高価そうな革張りのソファーのひんやりとした感触が心地良い。
「いいないいなルシウスは、ホグワーツ行けて。」
「貴女だってこの屋敷の中を自由に歩き回れるではないですか。」
「もう飽ーきーたあー!」
そう、いくらこの屋敷が不思議な物で溢れていたって、さすがに1ヶ月ずっと籠もりっきりじゃイヤになってしまう。大体卿はあたしが勝手に物に触ったりすると怒るし。
ここでは寝たい時に寝て起きたい時に起きて甘いものも好きなだけ食べられるけど、それだけの生活であたしが満足できるハズがないじゃない!!
ちら、とルシウスを盗み見れば彼はもうシカト決め込んでレポートに没頭している。
ちくしょうあたしの話し相手のクセに。
.