ハリポタ

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「君なんかに諭されなくても、忍耐くらいできるさ。」

「はっ、よく言うぜ。」

「余計な横やりを入れないでくれないかシリウス。そうだスニベルス!君のおかげで僕は新学期が始まってからというものガマンのしっぱなしだ!彼女の躾くらいちゃんとしてくれよ!」

「彼女?……何の話だ。」


怪訝に思いながらもセブルスは警戒を解かない。
しかし飛ばされた杖まであと半歩というところで杖はスルリと彼の足下をすり抜けジェームズの手に収まった。
さらに杖はヒョイと投げられシリウスへとバトンタッチされる。


「ッ!」

「ダイアゴン横丁で君がデートしてたあの転校生さ!僕とリリーの仲をねちっこく邪魔してくる陰湿さなんか本当に君そっくりだ。おしどりってやつかい?」

「貴様とエバンズの仲なら邪魔をするまでもないだろう。元から相手にもされていないじゃないか。」


セブルスは鼻で笑い飛ばしたが、杖を奪われたこの状況でそんな挑発は得策ではなかった。
頭に血が昇ったジェームズの放った呪いが彼の左耳を掠める。


「落ちつけよジェームズ、それじゃ当たるもんも当たらないぜ。」

「ああ、そうだね。次は外さないよ。」

「………ッ」


まるで射撃のゲームの時のようなやり取りの後、ジェームズは今度こそぴったりとセブルスに狙いを定めた。
セブルスの頬に一筋の汗が伝う。
避けなければ危ないことは分かっているが、杖も逃げ場も無い状況の中、彼にできるのはありったけの憎しみを込めて眼鏡をかけた宿敵を睨むことだけだった。


「エクスペリアームズ!」

「!」


呪文を唱えようとした瞬間、背後からの武装解除呪文によってジェームズの杖は弾かれたように彼の手を離れ宙を舞った。
呪文の飛んできた後ろを見れば、今まさに話題に上がっていたなまえ本人が杖をこちらに突き付けてずんずん歩いてくる。
どうやら今は一人のようだ。


「こらーっ!何してんのそこのメガネ!!」


「なんだ君か。」


ちょうど話題に挙がっていた人物の登場にジェームズはうんざりだと言わんばかりに顔をしかめた。
もはや当然のことだがリリーへの態度とは正反対だ、と隣にいたシリウスは思った。
どちらにせよ邪魔が入ったことに変わりは無い。
興が削がれすっかりテンションの下がったシリウスはなまえの相手をジェームズに任せ自分は傍観を決め込んだ。


「2対1で杖まで奪って!どうせなら正々堂々と決闘でもすればいいでしょ!」

「決闘!?冗談じゃないよ!こいつがどんな汚い手を使ってくるか分かったもんじゃない!」

「そりゃアンタでしょうが!ちょっとそこのシリウス!さっきから自分は関係ないって顔してるけどあんたも同罪なんだからね!」

「俺に説教するんじゃねぇよ、ちんくしゃの分際で。」

「ああっ!またちんくしゃって言ったあぁ!」


二人が去るまで我関せずを貫くつもりだったのに引き合いに出されたシリウスは内心舌打ちをした。
視界に彼女達を入れることもなく、彼はめんどくさそうにポケットに親指を引っかけた。


「てめえには関係ねーだろ。とっとと広間でも寮でも行きやがれ。」

「あのね、フツーの一般的な善人は目の前で知り合いがイジメにあってたら見過ごさないの。」

「フン、そりゃご立派な偽善だな。」

「偽善だろーがなんだろーが、アンタよりはずっとマシ!顔や家柄がよくてもあんたがやってることはサイテーだよ。」

「……………ッ」


家柄、それはシリウスにとっての地雷だった。
テメーに何が分かる、と怒鳴りかけた言葉は喉につっかえ、誰の耳にも届かない。
顔をあげたその先に自分をまっすぐ見据える少女を見たからだ。


「………俺に意見するな。」


沸々と怒りが込み上げる。
それは安っぽい正義を振りかざすこの女へのものか、あるいはこんなちっぽけな存在に一瞬でも怯んだ自分自身へのものか。
どちらにせよ、シリウスに分かるのは自分は今この苛立ちに突き動かされているということだ。


「お前なんかに説教される筋合いはねえんだよ、薄汚ねぇジャップが………」


その瞬間、なまえはきょとんと目を丸くした。
シリウスにとって女に暴言を吐くのなんて慣れっこだ。
今更どうとも思わない。
そうやって泣かせた女は数知れない。

さて、この女は次にどんな言葉を返してくるか、それともそこらの女と同様ひどいと泣きじゃくるか。
シリウスはニヤリとなまえを見下ろした。
しかし彼女の反応は彼の予想したどれとも違うものだった。







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