ハリポタ

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気付けば周りには何にもなくて、服もホグワーツの制服じゃなく卿の屋敷にいる時に着てたような私服。
あたしなんでこんな格好してるんだろう?
早く着替えて行かなくちゃ遅刻しちゃう。



リドル、リドル?
あたしの制服どこ?



いくら呼んでも誰も何も答えない。
ずっと歩いていてもどこにも着かない。



……もう、どこ行っちゃったんだろ。



あたしはため息をついて歩くのをやめた。
相変わらず世界は真っ白で右も左も分からない。

ふと、あたしは遠くにぼんやりとした人影を見つけた。



…………リドル?



その人影はリドルのように見えた。
呼べば人影はゆっくりと振り返り、あたしはその顔を見てハッとした。


卿……だ。


端正な顔が不機嫌そうに歪んでいる。
いつの間にかあたしたちは卿の屋敷の中のあたしの部屋にいた。



え!なんで!?
あたしホグワーツにいたのに!



まさか、連れ戻されちゃったんだろうか。
不安に満ちた目で卿の様子を窺ってみたが、卿は不機嫌そうな顔を崩さずただじっとあたしを見てる。



……………卿?



沈黙に耐えかねたあたしは恐る恐る卿を呼んだ。
すると卿もようやく口を開く。



「………誰からそんなことを聞いたかは知らんが、」



遠くから響くような声だ。
口の動きも言葉とチグハグで、壊れたビデオを見ているみたい。



「貴様のような間抜けは道具にもならん。」



え………!




その時あたしはやっと気付いた。

これは、あたしが卿の屋敷を出た日だ。

卿が言わなかった、あたしが卿に言ってほしかった言葉だ。

す、と卿が手を伸ばした。
体温の低い手があたしの頬に添えられる。



「そんな下らないことに使う頭があるのならそれを英語の勉強に回せ。」


………余計なお世話だよ。



軽く頬をつねられ揺すられる。
涙が出るのは貶されて悔しいからでもつねられた頬が痛いからでもないのは分かってる。



「……貴様は強がるくせに泣き虫だな。」


うるさいよ卿のばか、あほ、つんでれ。


「ふん、可愛げの無いところは相変わらずか。」



ニヤリと卿が笑った。
頬をつままれたまま、あたしもへにゃりと笑う。
今日くらいは、ちょっとだけ卿に優しくしてあげてもいいかな、なんて気がした。



あのね、卿

あたし…………
















「なまえ、そろそろ起きなよ。」

「………ん…ん?」


さっきより若くなった卿の声に呼ばれあたしの意識は深い夢の底から引き上げられた。
重たいまぶたを上げればあたしを見下ろすリドルの顔。
そして頬に鈍い痛み。


「…………なんであたしリドルにほっぺつねられてんの。」

「君がなかなか起きないから起こそうと思って。そしたらつねられたまま泣くわ笑うわ……正直ちょっと気色悪かった。」

「すいませんねキショくて!っていうかもっとマトモな方法で起こそうって気は無いの?」


あたしはリドルの手を払いのけベッドから身を起こした。
それと同時に実体化を解いたリドルはあたしが跳ね除けた布団をすり抜ける。


「あまりにも起きないからいつまでつねってれば起きるかなと思って。」

「陰湿。」

「純然たる好奇心からだよ。」


そう言ってリドルは反省なんて態度は微塵も見せずに笑ってみせた。
ああもうこいつの相手なんかしてても無駄だ。
しかもよく見たらちょっと時間やばいじゃん!


「もう!1時間目間に合わなかったらどうしてくれんの!?」

「僕のせいかい?全ては自己責任だよ。」

「あーもーはいはいそうですね!」


今日はもう朝から気分最悪だ。
その原因が変な夢を見たせいかリドルの起こし方が陰湿だったせいかは定かじゃないけど………いや、多分両方だな。

卿を夢に見るなんて、しかもちょっと優しい(?)卿なんて、ありえない!
夢の内容を思い出して顔が熱くなるのを感じた。
ばかじゃないの!ばかじゃないのあたし!
卿に、何期待してんの!?


(忘れよう………!)


卿があんなこと言うなんて、地球がひっくり返ったってありえないんだから。


(望むだけ、むだなんだから)


あたしはかばんを引っ掛けて談話室への階段を駆け下りた。


今日は授業に集中できそうにないな。







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