OPlong
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甲板に上がるとあっと言う間にたくさんの人が集まってきた。
みんな口々に「なんだそりゃ、犬か?猫か?」とか「何だエース、それ食うのか?」なんて不穏な言葉まで聞こえる。
なんだかんだで大勢の人に囲まれてあたしは甲板の真ん中の大きな椅子にどっかり構える大きな大きなおじいさんの前に連れてかれた。
大きい。ホントに大きい。
あたしがいつもより縮んだ姿であることを差し引いてもでっかい人だ。
口に立派な白いおひげを蓄えたそのおじいさんはこれまた大きな酒樽をまるでジョッキのように持ってお酒を飲んでいた。
「親父、おれ犬拾ったんだ!飼ってもいいだろ?」
「犬だぁ?」
おじいさんは片眉を上げてずいと突き出されたあたしを見下ろした。
ひい!怖い!
思わず全身の毛が逆立ってしまう。
「おいエース、それホントに犬かよ。どっちかつーと猫科っぽいぞ?」
「ああ、むかし見世物小屋で見たライオンの赤ん坊そっくりだ。」
大きなおじいさんの横にいたリーゼントの人と和服のキレイな人が言った。
それを聞いた男は怪訝な表情であたしの顔覗きこみ何か考えるように唸った。
「んなわけねーだろ、町中で拾ったんだぞ。きっと捨て犬だ。」
ちょっと人の意見に耳を傾けろおおおぉぉ!!!
心の中でツッコミを入れたが、実際にそれを口に出すなんて怖くてできない。
見た目はライオン心はチキン、そうそれはあたし。
はぁ、情けない………
いっそここで人間の姿に戻れば家に帰らせてくれるだろうか。
いや、あたし今服着てない!ダメだ!
こんな大勢の前ですっぽんぽんなんて恥ずかしくて死ぬ!
それに………
あたしはちらりと空を見た。
頭上にはためく黒い旗は間違いなくジョリーロジャー。
つまりこの人たち、海賊だ。
ライオン人間だなんて知られたら拐われてどっかに売り飛ばされちゃうかもしれない。(もうすでに拐われちゃってるけど)
ここは大人しく様子を窺って、スキを見て逃げよう。
うん、それがいい!
「エース、お前ちゃんとそいつの面倒見れんのか。」
「もちろんだ!何があってもこいつはおれが守る!」
おじいさんの問いに男は力強くそう言い切った。
あまりにも揺るぎなく言うものだから不覚にもドキッとしてしまう。
しっかりしろ自分!そんなことより逃げるチャンスを探さなきゃ!
「グララララ!覚悟は本物みてえだな!エース、名前を付けてやれ。お前が今日からそいつの親だ。」
「じゃあ親父はこいつのじいちゃんだな!」
男はニカっと笑ってそう言うと回りの皆もどっと沸いた。
おじいさんもグララララと独特の笑い声で楽しそうに笑う。
「名前はもう考えてあるんだ。ステファン2号だからステファニー。」
だからステファンて誰!
「グララ、いい名前だ。」
待って待って!あたしそんな名前じゃないから!
「がう!ぎゃああう!!」
「お、気に入ったかステファニー!」
「ぎゃああおう!!」
違ーーーーう!!!
抗議の意味を込めて暴れてみたが男には全く伝わらない。
もう!違う!違うの!
あたしは犬じゃないし捨てられてもないしステファニーなんて名前でもないの!!
言いたいことは山ほどあるのに、暴れれば暴れるほど男はあたしが嬉しがってると勘違いしてあたしを抱く手に力を込める。
いやー!抱き締めんな!暑い!!!
「おいエース、そいつ腹減ってんじゃねぇの?」
「お、そうか。食堂にステファンのメシまだ残ってたっけか?」
「今出してやるよ。」
「サンキューサッチ。」
しまいに話はどんどん的外れな方向へと進んでいき、あれよあれよと言う間にあたしは男に抱かれたまま船内へと連れて行かれた。
………あ、なんかイヤな予感がする。
当の本人の意思が迷子
(………ドッグフードなんて出されても食べないからね!)