OPlong

□03
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「さぁ、遠慮せず食え!」

「…………」


ドンと重そうな音をたてて床に置かれたのは分厚い何かの肉の入った器。
え?ちょっと待って、ステファンて犬なんだよね?
犬にこんなでかい肉食わせてたのこの人たち。
一応火は通してあるみたいだけど、牛でもなく豚でもない独特の臭みのある肉だ。

……っていうかこんなの食べらんないよ、あたし。


「…………」


あたしはズズズッと前足で器を押しのけそっぽを向いた。
しかし肉は男の手によってしつこくあたしの前に置かれる。
それをまた前足でのけてそっぽを向いて……意外としつこいなこの人。


「なんだよ食わねえのか?」


食べないよ。


「じゃあおれが食っちまうぞ?」


どーぞ。


「腹減ってねえんじゃねえの?こいつ。」

「うーん、おれとしてはもうちょっと子犬らしく太らせたいんだけどなあ……」


だから犬じゃないってば。


「そうだ、サンポ行くか?動いたら腹減るかもしんねえし。」

「お、それじゃステファンのために買ってあったアレ、使うか?」


“アレ”?なんかまた嫌な予感……。






数十分後、リーゼントの人が手にして戻ってきたのは犬の首輪とそれとお揃いのリードだった。
見た感じ、まだ新品。


「捨てなくてよかったな。」

「ああ……ステファンに買ったやつだったけど、着ける前に逝っちまいやがって……」


え、ステファン死んだの?!

首輪を片手にしんみりしてたかと思えば、男は徐にあたしに手を伸ばした。
………って待て待て待て、まさか……!
事態を察したあたしは咄嗟に逃げようとしたが、それはリーゼントさんにあっさり阻まれてしまった。


「サッチ、ナイス!」

「抑えててやるから早く着けちまえよ。」

「おう。」


カチャン


金具を留める音がして、同時に首にかかるわずかな重み。
うわ、首輪着けられた。
なんとなく尊厳とか傷つけられた感じでショックを受けていると、今度はリードに繋がれ引っ張られた。
ぐえ。


「行くぞステファニー!」


わんとか言うと思うなよ。

はしゃぐ男にあたしはしぶしぶついて行った。










お散歩デビュー

(隙を見て逃げよう!)

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