ショート

□第一次布団大戦
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「オイ、そこで何してやがる」
「……寝てます…寝てますから返事できません」
「してんじゃねえかよ」
「……寝言です」

頭の上からキャプテンのイラついた声が降ってきた。
キャプテンが怒るのもムリはない。
だってあたしキャプテンの部屋に勝手に入ってキャプテンのベッド占領してるんだもん。

「どけ、出てけ。」
「すいません、できません。」
「てめぇ自分の部屋があるだろうが。特別に作ってやった一人部屋が。」
「あたし不寝番だったんですよ」
「あ?」

当番終わったから自分の部屋でとっとと寝ようと思ったんです。そんで部屋に戻る途中キャプテンの部屋の前を通ったんですけど、そん時にキャプテンのベッドはきっとふっかふかで気持ちいいだろうな〜なんてふと思っちゃって。部屋入ってみたらこれまた都合よくキャプテンいないし予想以上にお布団はふっかふかだし、これはもう寝るしかないじゃないですか…いたっ

説明を終えたとこでキャプテンに蹴り転がされた。無抵抗の女の子蹴るなんてこのドSが。

「ちょっとなにすんですか」
「うるせぇ、俺も眠いんだよ。」

そう言ってキャプテンはあたしを転がして空いたスペースに潜り込んできた。
しかたなくあたしはベッドの端に寄ったが、キャプテンが布団を体に巻きつけるように引っ張って結局あたしとキャプテンは背中合わせで密着した。しかも布団の面積ほとんどをキャプテンに取られたからすきま風が寒い。

「布団ひっぱんないでくださいよ」
「オレに命令すんな。イヤなら部屋戻れ。」
「やですよ。こんな気持ちいい布団手放せません!」

あたしは仕返しとばかりに布団をぐいと引っ張った。
しかしキャプテンの力にかなうハズもなく、ただ背中がますます強くキャプテンにくっついただけだった。
もっと力をこめてぐいぐい引いてみても結果はさほど変わらない。
あたしはため息をついて諦め、そのまま寝ることにした。

「キャプテン、さむい…」
「……」
「カゼひいたらキャプテンのせいですからねー」
「そんときゃオレが看病してやるよ」
「……………………そりゃどーも」

そしてそれきりキャプテンは何も言わなくなった。
寝息も聞こえてこなくて、この人ホントに生きた人間か?なんて思うけど、そんなこと言ったらまた蹴られるだろうから思うだけに止めておく。(人の話は聞かないくせに悪口だけはどんな時もしっかり聞いてんだからこのキャプテンは)


「おやすみキャプテン」

背中がもっとくっついてきたのは気のせいか、キャプテンが身じろいだだけか。
ただ、掠れた声でキャプテンが言った「早く寝ろ」だけは確かに聞こえた。


とたんになんだかくっついた背中から伝わる温度が恥ずかしくなって、

あたしはつい布団をギュッと手繰り寄せた。



安眠を妨害されたキャプテンのげんこつがあたしの頭にとんできた。










(ダメだ!なんかドキドキして眠れません!)
(…診察してやろうか?)
(え?ちょっ、きゃああ!どこ触ってんですかキャプテン!!!)

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