短編小説3

□携帯灰皿
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全てが重圧だった。

両親が残したモノも。
周りからの期待も。

全てがわたしを追い立てる。

母以上のものを求められ。
父以上のものを強いられ。

それが出来なければ、失敗作と呼ばれる。

出来て当たり前の血だと。

逃げ込んだはずの夢の中。
そこでも全てのモノがわたしを追い立て、蹴飛ばして、走らせる。

そんなわたしに、あなたは言った。

「生き急ぐなよ」

ぐしゃぐしゃとわたしの頭を掻き混ぜて。

「人生長えんだからさ。若いうちからやることやっちまったら、あとの人生どーすんのよ。すっげえ暇になるよ?」

唯一、そう言った人だった。

その目はどこか寂しそうで。

ああ、この人はわたしと同じなのだと、すぐに分かった。

「おじさん、暇なの?」
「ウン。暇なの」
「……そう、じゃあ、」

わたしと遊んで?

それが、その人とのゲームの始まりだった。













『危険な遊び』
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