短編小説3
□第4話
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前回までのあらすじ!
多趣味なことだけが自慢の私、海野亜朝は極々平凡な17歳の女子高生!
……の、はずでした!
ひょんなことから異世界に飛ばされてからは色んな意味で世界が一変、あっちとこっちを行ったり来たり。
王様になれとか言われたり、海賊船に不時着したり。
海賊船で出会ったミカちゃんことミカエルさんは、実はロットちゃんやアデルさんと同じ、お城に仕える人だったんだって。
趣味が『海賊船を制圧すること』という、外見に似合わず過激派らしい彼を引き連れ、私達はクロノス王国へと戻ったのでした。
……アデルさんに怒られるためにね。
『MT,アーサー』
「お帰りなさいませ、アーサー様」
「……ただいまです」
「ちょっとそこにお座りなさい」
ロットちゃんに救出され、やだやだ船長行かないでぇええ!と泣きつく海賊さん達からミカちゃんを引きはがし、ロットちゃんの乗って来た船に乗り込んだ私達3人は、夜の荒れ狂う海を渡り、今朝、やっとの思いでクロノス王国へと戻って来た。
……ぁ、ハイすいませんすいません今の嘘です。
海賊船で出会ったミカちゃんことミカエルさんは、クロノス王国の海軍を纏める軍人さんで、更に言うなら『ポセイドンの娘』とか言う血筋の人らしくて……なんだか分からないけれど、海のことに関してはスペシャリストらしい。
船は揺り篭程度も揺れずに海を進んだ。
……ぁ、ハイすいませんこれも嘘です。
ぶっちゃけ、船の中ではずっと寝てたのでなんにも知らないんです。
でもよく考えたら私ってすごいわよね、こっちの世界では深夜だったけど、向こうの世界では朝の9時とか10時だったはずなのにまた寝れちゃうなんて。
ま、二度寝ですよ。
そうこうして目を覚ました私が見たのは何度かは目にしたお城で、クロノス王国は海に面してるわけではないから、きっと私は船から馬車に移された時も起きなかったってことですよね。
一度寝たら起きないタチなんです。
そして。
現在、朝日の眩しい午前様。
やっと戻って来たお城の大理石の床に、私は正座させられているわけですよ。
「ご無事でなによりです、アーサー様」
「正座させられたままその台詞を聞かされることになるとは思いませんでした……」
「それがなにか?」
「いえ、なんでもないです……」
アデルさんに威圧的な笑顔のまま睨みつけられれば、へらりと笑うしかなくなる。
て言うか、眼鏡の奥の目が笑ってない。
ほんとうちの母ちゃんに似てるわ。
逆らえないわこの人。
「……アデル、一つ良いだろうか?」
壮大なスケールを誇るこの大広間に響いた、低い声。
隣を見れば、私と同じく正座させられているミカちゃんが、ちっとも悪びれない無邪気な表情で手を挙げていた。
おお……ミカちゃんったら勇者。
「なんですか、ミカエル」
「どうして私までここに座らされているのだろうか?」
「ああ、そうですね。立ってくださって構いませんよ。あなたが城を空けたせいで海が無法地帯になってるんです。始末書の束が部屋を埋め尽くしてるらしいのでさっさと片付けてらっしゃい」
「…………正座は嫌いじゃないよ」
「ならその口閉じていなさい」
よ、容赦無ぇえぇえええ……!
ミカちゃんと出会ってからまだ1日も経っていないけれど、彼の人柄はなんとなく掴んでいた。
陽気で、朗らかで、ちょっと天然。
そんな彼が有り得ないほどやるせない顔をしている。
きっとそんな顔は早々しないんだろうな……どんだけだよアデルさん、なんて思いながらミカちゃんを見つめていると、ミカちゃんの隣で私達と同じく正座させられている、すっかり幼い姿に戻った可愛らしいロットちゃんと目が合った。
全然可愛くない目で睨みつけられた。
……ほんとマジですいません。
「アーサー様」
「はいっ」
名前を呼ばれてバッと振り返れば、今度は笑顔すら消し去ったアデルさんに睨みつけられる。
「私は最後にお会いした時、お召し変えが済みましたらすぐに下りて来てくださいと言いましたね」
……はい。聞きました。
「なら何故2週間も留守に?」
「…………にしゅうかん?」
2週間って、なに?
私は、日本に戻って、晩ごはんと朝ごはんしか食べてなくて……つまり。
私は24時間すら、向こうで過ごしていないのに。
こっちでは、2週間?
……なにこのお約束展開。
少女マンガ異世界トリップファンタジー、不思議遊戯を読んでて良かったと今初めて思いました。