短編小説3

□携帯灰皿
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不思議な話なんだけどね。

私はいつも、あなたの『大丈夫』はすごいなって思うの。

根拠なんて何にもないでしょ?
下手したら真面目に聞いてない時もあるっていうのに。

なのに、あなたの『大丈夫』ほど安心出来る言葉は無いのよね。

どんな正確なデータよりも、前例よりも。

私はあなたの『大丈夫』に安心する。

友達と喧嘩しちゃった時も、大学受験の時も、初めてのバイトの面接の時も。

あなたの『大丈夫』があったから、私はいつも安心して自分の思う道を進めたんだと思うの。

そう、つまり。

逆を言えば、あなたの『大丈夫』は私に作用するだけであって、なにか科学的な根拠があるわけじゃないのよね。

「……雨、降りましたけど」
「あー?うわ、ほんとだびっしょびしょ」
「うわとかひどいよ!おじさんが『大丈夫だろ』って言うから傘持ってかなかったのに!!」
「俺そんなん言ったかー?」

……ほら、聞いてないバージョン。

「とりあえず風呂入って来い、風呂」
「風邪ひいたらおじさんのせいだからね!」
「はは、大丈夫だってぇ」

お風呂上がったら、おじさんがジンジャーオレ作ったげますから。
そう言ってへらりと笑うその人。

きっとこの『大丈夫』は外れないんだわ。














『魔法のコトバ』
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