短編小説3

□こどものあそび
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じんわりと、手に汗が滲む。

慣れ親しんだ心地好い興奮。

平和な時代に生まれたオレ達は当然刀なんて持ったことが無いけれど、武者震いってたぶんこれのことなんだろうな、と。
高鳴る心臓をそのままに、そんなことを思う。

「あかん……あかんて、央ちゃん」
「オレの助けなんか要らねぇっつったのはお前だろ、安西」
「せやけど、こんな……」

そう言って、オレと同じく興奮に手を小さく震わせる安西蜜美。

でも。

その興奮は、恐怖という名のそれだろう。

「央ちゃん、こんなん、うち無理や……絶対あかんって……!」

小さく首を振りながら。

安西は、二つの巨体に囲まれたまま、助けを求めるようにオレを見つめる。

でも、そんな程度で哀れに思ってやるほど。

オレは人間出来ちゃいない。

「お前が言ったんだろ?オレの助けなんか要らねぇって」
「せやけど……!」
「いいぜ、見ててやるよ……お前がそいつらにヤられんの」
「央ちゃっ、きゃああ……ッ」

オレの目の前で、巨体に押し倒される安西。
らしくない悲鳴を上げるその女を見ているのは、なかなか悪くない気分だった。

「イヤや!なかば!央ちゃんっ、お願い……っ、うちが悪かったからあッ」
「なにが悪かったって?」
「せやからっ、うちではこいつら相手に出来へんから……っ、せやから、」

半分涙ぐむ安西を見て、にい、と笑う。

我ながら悪いカオしてんだろうな、とは思うが、楽しいものは仕方がない。

「で、安西?」
「なに……っ、」
「どうして欲しいよ、このオレに」

自分のクチで言ってみな。

そう言って口を吊り上げて笑うオレを呆然と見つめたかと思えば。
安西は屈辱に頬を染めて、勢い良く椅子から立ち上がった。

「せんせえ!月島さんがうちに執拗な言葉責めをして来るんですがーッ!」
「ジンオウガ2匹を自力で狩ろうってのがまず間違ってんだよ、お前は」
「とりあえずな、お前らは授業中にモンハンすんの止めろ……ッ!」

そこまでガチャガチャやったところで、それまではイライラしながらも黙っていた加藤がさすがにキレた。

「授業言うても自習ですやーん」
「あのな、安西……先生今までお前には黙ってたけどな、実は自習も授業なんだよ」
「そうなん!?」
「自習教官してる程度で調子乗んなよ加藤」
「あぁ?良い度胸だな月島央、あとで指導室来い!」
「ヤだぁ、加藤せんせえがまたアタシにいやらしいことしようとしてるぅ」
「気持ち悪ぃ声出すな!」

自習、とでかでかと書かれた黒板を背に、体格の良い体をスーツに押し込めた“ザ・体育会系”加藤が、バン、と教卓を叩いた。

「没収だ没収!おら寄越せ月島!」
「セクハラよぉ!加藤せんせえがナカバちゃんの体触ろうとするぅ!」
「褐色スキンヘッドのゴツいハンマー使い操作するような女には興味無ぇよ!」
「ぎゃー!加藤ちゃんやめて!揺らすんやめて!せめてセーブさせてぇな!」

そんなこんなで。

オレ達の自習は毎回、結局授業になんてなりゃしねぇわけだ。

「とりあえず、安西と月島は放課後、生徒指導室来いよ……」
「反省文フラグ来たで、これ」
「こんなゲーム作るカプコンが悪ぃだろ……ちなみに加藤、何使い?」
「…………弓」
「ぶっは!ちっちえ!加藤見た目の割りに気ぃちっちえぇ!」














『こどものあそび』

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