短編小説3
□十人十色
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【盗撮は犯罪です】
極普通の頭脳に、極普通の容姿。
それが極普通の県立高校に通うあたしを構成する全て。
確かに生徒会に入っちゃったりなんかはしてるけど、副会長だしそんな特別なカリスマ性があるわけでも無い。
ましてや我が校は、選挙で選び抜かれた生徒会長が副会長を選ぶ。
そんな“副会長”という役職は、全校生徒から“被害者”と呼ばれているくらいなのだから。
少し不幸体質。
だけどそれ以外は極普通の女子高生。
それが、あたし。
「短編にしては随分と長いモノローグだな。選挙で選び抜かれた〜くらいで、みんな読むのを止めてるんじゃないのか?」
「黙りやがれです、会長」
「生徒会長に向かってその口のきき方……やめたまえ、興奮するだろう」
あたしの隣に座るこの男。
何を隠そう、我が校きっての秀才であり変人である生徒会長様である。
又の名を疫病神。
「……何度も聞きますけど」
「なんだね?」
「どうしてあたしを選んだんです?」
「インスピレーションだよ。私は自分の直感を信じているからな」
そう言って、あたしを生徒会に引きずり込んだ張本人は誇らしげな顔をしている。
ぶっちゃけ殴りたい。
先程も言った通り、生徒会選挙で当選した“新・生徒会長”は自分で相方、つまり“生徒会副会長”を選ぶ。
自分の右腕になるであろう人物くらい自分で選びたい、そんな意見が始まりだったとか。
まぁ、それは良い。
大概の新・生徒会長は自分の友人を新・副会長として選ぶから。
しかし、現在あたしの横に座る変人……もとい現・生徒会長様は違った。
「キミと居れば退屈せずにすみそうだと思ったのだよ」
こいつはあたしを選びやがった。
喋ったことも無ければ面識も無い、更には学年さえ違う、あたしを。
さすが変人はやることが違うわね。
「迷惑だったかい?」
「大変迷惑です。天に召されて下さい」
「そんな蔑んだ目で見ないでくれたまえ、もどかしいじゃないか……踏んでくれたって構わないよ?」
はい、無視。
「それより会長」
「なんだい?」
「近いです」
実は、さっきからあたしの眼球スレスレの所にカメラのレンズがあったりする。
昼休みの生徒会室。
存在するのはあたしと会長のみ。
隣に座る変人生徒会長は、なぜかあたしにカメラを向けている。
無駄にデカいやつ。
しかも近い、近すぎる。
肌質でも調べる気か。
「なに撮ってんスか?」
「その答えは“まつげ”だ、副会長」
「まつげ?」
「あぁ、今日は随分と急いでマスカラを塗ったんだね。コペコペにくっ付いてるじゃないか。ブラシは通したかい?下地は?私としてはランコムがお薦めだよ」
こいつ、死ねば良いのに。
「……会長」
「なんだい、副会長」
「盗撮は犯罪って知ってます?」
極普通のあたし。
至極変人なこいつ。
今日もあたしは、振り回される。
完.