短編小説2

□7mミルキーウェイ
2ページ/4ページ


「なんなんだよ!なんなんだよ!」
「『ナンナンダヨ!』」
「マネすんなし!」
「なにその口調。風彦キモい」
「ちっくしょう腑に落ちねぇ!」

付き合い始めたのが中学2年。
現在俺達は高校2年。

てことは、俺達はもう約4年間もお互いの家へと続くこの道路を横断してないってことになるのか……。

織り姫と彦星もビックリだぜ。

そうだ!織り姫と彦星で思い出した!

「あのすいませんけど夏姫さん!」
「……なによ」
「これ見えます?これ!この緑の!」
「………………ピローンッ!」
「はい!戸田夏姫さん!」
「すいか!」
「正解!明日のバーベキューのすいか!これを俺はお前ん家に、」
「それ以上入ってくんなし」
「人の話は最後まで聞きなさい!」

住宅街のド真ん中で声を張り上げ、阿呆な会話を繰り広げる俺達。
近所の皆さんごめんなさい。

しかし、俺にはやらなきゃいけないことがあるんです。

「おい、夏姫!」

俺はさっきから持っている、赤いネットに包まれた大きなすいかを夏姫に見せ付けるように抱え上げた。

「夏姫!すいかだ!」
「……すいか」
「そうだ、すいかだ!分かるか!」
「風彦も大概私のこと馬鹿にしてるよね」

そう言うわりにはさして気にした様子も見せない夏姫に、俺は尚も話し続ける。

「今日は何日だ!?」
「7月の6日ですね」
「明日はなんの日だっ!?」
「七夕ですね」
「そうだ!バーベキューの日だ!」

我々、川嶋家と戸田家には面白い習慣がある。

それは。

七夕のバーベキュー会。

クリスマスも正月も特に合同で祝うわけでもないのに、なぜか七夕だけは集まる我々川嶋家と戸田家。

理由なんか知らねぇ。

知らねぇが、昔っから七夕の日は毎年、悲しきかな我が家より庭の広い戸田家で双方の家族が集まり、意味も無く肉を焼いてハシャぐ。

……ほんと意味分かんねぇ行事だな。

でも楽しいのは確かだし、その日ばかりは俺も大手を振って戸田家に入れるってもんだ。
有り難い話である。

だが、難点が一つ。

「だからこれ!明日の食後のすいか!お前ん家の冷蔵庫デカいから入れといてくれって母さんから預かった!」
「そこに置いて速やかに家に戻ってください。そしたら私が取りに行きます」
「なんでわざわざそんな身の代金引き渡しみてぇなことすんだよ!」
「どっちにしろ明日も雨でしょ、どーせ」
「………………」

そう、七夕は雨が多い。

そして、雨が降れば屋外でのバーベキューは当然中止なのである。


 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ