短編小説2

□北斗くんと姉の親友
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「この方、私の親友の秦伊織くん」

そう言って、最愛の姉が紹介して来たのは。

到底わたしとは気が合いそうに無い、無愛想を絵に描いたような男だった。






















『北斗くんと姉の親友』






















「は……、じめ、ま、して」

仲條北斗、15才。

放任主義にも程がある両親の間に産まれたわたしは、事実上、最愛の姉である仲條彩女に育てられた。
一回り近く年の離れた姉ちゃんは、わたしともう一人の妹を育て上げるほどにしっかりしているのに、どこか世間知らずでのんびり屋で天然で可愛くて美人で愛しくて……とにかくわたしはそんな姉ちゃんが好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好き過ぎて生きてるのがツライくらい好きで!

だからこそ!

わたしは、物心付いた時からは姉ちゃんを守るためだけに生きて来たのだ。

美人で可愛くて家事も得意で、だけどどこかフワフワで世間知らずでホンワカしてて可愛くて以下略な姉ちゃんの周りには、いつも男の魔の手が絶えない。

勉強会?
合コン?

適度に盛り上がった一次会からのカラオケ二次会、ちょっと彩女ちゃん一曲歌ってよと言われ促されるままにそのエンジェルボイスでaikoを歌い上げなんだよ彩女ちゃんってば声まで可愛いのかよてか選曲がまず可愛いよな当たり前だろテメェの流れからのロンリーチャップリンのデュエットなわけですね、許すかボケ死ね!

そんな男共から姉ちゃんを守るため、あんなにあんなに努力してたのに。

なのに……っ。

目の前には、わたしの顔をじっと見つめる鉄仮面男。

秦伊織、と姉ちゃんが紹介したその男は、わたしが血を吐く思いで吐き出した『はじめまして』と引き攣る笑顔を、無表情で華麗にスルー。

マジ殺したろか。

「彩女、だれ、コレ」

そう、秦伊織はさして興味無さげにわたしを指差す。

って!人を指差すなこのヤロウ!

「私のすぐ下の妹よ。北斗くんていうの。前に話してたでしょう?」
「そうだったか?」
「もう、伊織くんったらいつもそうなんだから」

そしてなんだ、この雰囲気。

まるで恋人のような…………って、いやいやいやいやそんなまさか!
ちょい待て!ちょい待て北斗落ち着け大丈夫だ落ち着いて状況を整理しよう!

大丈夫だわたしは整理が得意だ!


 
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