短編小説2

□第2話
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前回までのあらすじ!

極々平凡な人生を歩んで来た私、海野亜朝は公立高校に通う17歳!
ひょんなことから異世界に飛んじゃったらしい私は、飛ばされた世界の国王になるために旅をして経験値を詰まなきゃいけないんだって!!じゃなきゃ元の世界には帰れないっていう脅し付きでね!!

こりゃ参ったね!

旅のオトモには電気鼠ならぬ電気美少年ロットちゃんを付けてもらい、恐さレベルはオカンと同等いやそれ以上のアデルさんに睨まれながら、さぁ魔法の国を旅する道の始まりです!!

そんなこんななドキドキハートフルコメディ!!

的な展開を希望しますよ、神様!!





















『MT,アーサー』





















壮大な大広間で壮大な説明を受けた私は、私を部屋に連れて行くようアデルさんから命じられたらしいロットちゃんの小さな背中を追いかけて、ベルサイユ宮殿顔負けの廊下を進んでいた。

……ロットちゃんの罵声を聞きながら。

「まじ!お前は!俺に感謝しろよ!?」
「はあ……、」
「赤を選んでたら今頃お前の首は体にくっついてねえだろうし、緑を選んでたら子宮がいくつあっても足りてねえとこだったんだからな!!」
「なにそれ怖い!!」

なんだかよく分からないけれど、あの3つの石のうち、ロットちゃんの青色以外を選んでいたらえらいメに合うところだったらしい。

首とか子宮とかよく分かんないけどマジ異世界怖い。

くわばらくわばら。

「ん、着いたぞ」

そうこうしているうちに目的の場所に着いたらしい。
さっきの大広間と比べればだいぶん控えめとは言え、それでも豪勢な造りをした扉の前でロットちゃんは足を止めた。

「ここが今日からお前の部屋だとよ」
「入って良いの?」
「お前の部屋だつってんだろ」
「ふわー、そうかー…………こんにちは!どなたですか!突然こんな世界に、」
「それはもう良い!!」

ロットちゃんはどうやらこの常套句に小さなトラウマを持ってしまったらしい。
頭を抱えんばかりの少年を横目に、私は目の前の扉を開けた。

「……わお、すごい」
「正式に国王になりゃ、もっとすげえとこに移れるぜ」
「これで十分だよ」

部屋の内装はさすがのロココ調で、タンスや椅子の一つ一つにまで綺麗な装飾がされている。
パッと見ただけでも広々とした部屋だけれど、部屋の中にこれまた綺麗な装飾のドアがある辺り、どうやらまだ部屋は続くようだ。

「何部屋あるの?」
「知らん。自分で見て来いよ」
「よし!ちょっくら探検して来るわ!!」
「俺は隣の部屋割り当てられてっからな、なんかあったら呼べよ」

そのキレイなお顔を至極面倒臭そうに歪めたロットちゃんはそう言って隣の部屋らしきドアを指刺す。

護衛係お疲れさまですマジで。

嫌々割り当てられたらしい自室へと向かう、若干の哀愁が漂っている小さな背中へごめんなさいと念じつつ、私は自分の部屋へと足を進めた。

「……すごいなぁ」

パステルカラーで統一された部屋は、家具はもちろんのこと、壁紙やカーテンまで全てが絵本の中のようで。

私は目についたドアを次々と開けて行く。

「わー、すごいバルコニー付いてる……って暖炉だ!初めて見た!!」

独り言にしては派手過ぎる声を上げながらドアを開け、ドアを開け、ドアを開け。
自分のキャラじゃないくらいにはしゃぎ倒していた私だけれど、行き着いた寝室らしき部屋で天蓋付きベッドを見た瞬間、なぜか一気に冷静になってしまった。

「……ほんとに日本じゃないんだ、ここ」

ぁ、やべ。正気に戻っちゃった。

それまでは無理矢理にテンションを上げることで無視していた絶望感が襲ってくる。

……どうしよう、これから。

ロットちゃんやアデルさんには言わなかったけれど、正直に言えば緊張と不安感と状況が理解出来ないことによる頭痛のせいでさっきから吐き気がすごい。
あまりのパニックに息が詰まって泣きそうだった。

とりあえず横になりたくて、私は部屋に設置されたお伽話のような天蓋付きベッドへと倒れ込む。

「……夢じゃないのかなぁ」

夢なら覚めてくれ。
そう思って目をつむってみたところで、再び目を開けた私を迎えてくれるのは美しすぎる内装の部屋と慣れないシルクの感触だけだ。

自分の部屋の、だまのあるごわごわした安物のシーツが恋しいよ。


 
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