短編小説4
□第8話
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前回までのあらすじ!
少し気が多い私なりにぃいいい!まわあってきた道ぃいいい!
ってドリカムとか今時の高校生は聞かねぇよというツッコミは受け付けません、海野亜朝、花の17歳です。
ひょんなことから異世界に飛んじゃったらしい私は、飛ばされた世界の国王になるために旅をしたり仲間を探したりしなければいけないそうです!!
しっかしまぁ、その仲間達のキャラが濃い!
電気美少年ロットちゃんに、ドS眼鏡のアデルさんに、オトメン海軍ミカちゃん、炎使いであり魔法使い予備軍であるキレキャラ、イン君。
それから。
満を持して出会った、クロノス王国の二大巨頭。
その一人である大賢者リヒャルトさんは、つまり、私が国王になった暁には私と一緒に国を牛耳ることになるわけなんだけど…………全くそんな風には見えませんのですが。
『MT,アーサー』
「えーと、すいませんリー君もっかい言ってくれる?」
何を言われたのか分からずに。
痛む頭を押さえたままそう呟いた私に、リー君は……。
この王国の大賢者である少年……に見える青年は、こてん、とその甘い頬を傾けた。
「ええと、ですからぁ」
「うん」
「僕、亡霊なんですよぅ」
「……つまり?」
「肉体がありませんので、魔力が非常に強くなってるんです。ですから、アーサー様をより正確に異世界に飛ばせます……よう?」
「つまり……どういうことだってばよ」
つまりはこういうことらしい。
リー君ことリヒャルト・ルロノワは色々な事情があって肉体を失い、今は魂だけがこの場所に留まっている状態らしい。
で、肉体が無いほうが魔法使いの魔力は強くなるんだとか。
だから、今は肉体を魔力で再現し、更には前に言っていた地球とのバイカイ……ロットちゃんのサファイアのブローチと、この世界を繋ぐ橋を非常に上手く繋ぎ合わせることが可能らしい。
……つまり?
「リー君は幽霊なの?」
「まぁ、ありていに言ってしまえばそうなりますねぇ」
「マジかよ私スタンド使いじゃん」
来たな!
来たなコレ!
「じゃあ、今日からリー君のアダ名はキラークイーンね!」
「キラークイーン?」
「バイツァ・ダスト!」
「クイーンはアーサー様ですよぅ」
「いつから私が女王だと錯覚していた?」
私はまだ、ただの国王候補者ですよ。
「ええ……ですが、いずれはそうなる運命ですよ」
そう、どこか……こう、まるで恋する乙女のようなピンク色のオーラを纏うリー君は、ほうっとした表情で私を見つめる。
それに私が眉をしかめるよりも先に、それまで黙っていたメガネ……こと、アデルさんが口を開いた。
「とりあえず、そういうことですので。リヒャルト、もう橋送りは可能ですか?」
「うん。魔力に問題は無いよ」
「結構。なら、さっそくですが……アーサー様」
「はいっ?」
よもや自分が話し掛けられるなどとは1ミリも考えていなかった私は、すき家の牛丼食べたいなぁ、なんて考えていたわけで。
突然名前を呼ばれ、アホ面を向けた私に、アデルさんは一瞬凄まじく嫌そうな顔をしてから溜め息をついた。
「いいですか、アーサー様」
「……すいません」
「よろしい。リヒャルトの体調が整ったようですので、橋送りを行います」
「はしおくり?」
「ええ。アーサー様を元の世界に飛ばす作業ですよ」
「ずいぶんお待たせしてしまって、すいませんでしたぁ」
そう言って、私を見つめてくるメガネとヘの字眉毛。
……え、ちょっ、どういうこと?
「以前言った通り、王候補者は一度目の世界移動だけは自分の意志によって行うことが可能です」
……その節はすいませんでした。
「ですが、その後の世界移動には膨大な量の魔力とエネルギーが必要になる。それを行えるのは、この国でも唯一、大賢者のみです」
「その僕が不調だったものですから」
「ですから、アーサー様。あなたはやっと一度目の正式な世界移動を……橋送りを、行えるのですよ」
元の世界に一時的にでも帰れるのです。
もっと喜んだらどうです、と。
アデルさんは、眼鏡の奥にある薄紫色の瞳を少し意味ありげに歪ませた。
まるでそれが不快であるかのように。
でもまぁ、私がそんな空気を読むはずもなく。
……んー、て言うか。
「そんなにこだわり無いですよ。帰りたいとか、そういうの」
「あれだけ帰りたい帰りたいと喚いていたのは、どこのどなたですか」
「うひゃあ!そうだったんですかぁ!?それはすいませんでしたぁ!」
「いいよ!全然大丈夫だから、リー君!」
そのまま土下座でも始めそうな大賢者を宥めつつ、私はアデルさんを見上げる。
「そりゃあ、もちろん、帰りたくないわけじゃないですよ?」
でも。
「やるべきことがありますから」
「…………」
「やること決まっちゃえば、やるだけですよね。遊んでるヒマ無いっていうか」
これでもね、夏休みの宿題は7月中に終わらせるタイプなんです、私。
アサガオは枯らしちゃったけども!
ええと、だからですね。
つまり!
「私、ここでやらなきゃいけないこといっぱいありますよね?」
「……おっしゃる通りです」
「じゃあ、帰りません」
私、もっとこの国のことを知りたいんです。
良いことも、悪いことも。
だって、短い時間とはいえども。
私はここで、生きるんですから。
そう、少し考えながら。
それでも素直に、私は稚拙な自分の言葉を口にする。
頭の良いふりをする必要はない。
私は私として、ここで生きるのだから。