戴きもの
□幸せは空の色。
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空を飛びたかった。
「はぁ?何言ってんの、バカじゃねぇの、あ、もともとバカだったな、ごめんな。」
…うん。自分でもバカな発言したと思ったけどさ、そこまで言わなくてもいいよね?それに謝られるとなんか自分が居た堪れないからやめて欲しいんだけど。というか、いいよね!空を飛びたいって思うくらい!ほら、あの国民的アニメのOPだって言ってるじゃない!
「そ〜らを自由に飛びたいな〜」
「はい、ヘリコプター。」
「嫌だ!!そんな夢のないの使いたくない!現実見たくない!!」
「逃げちゃダメだ!!これが現実なんだ!」
「いやぁぁあああ!!」
…何やってんだ。何やってんだ。大事なことなので二回言いました。…じゃなくて!
「私は天使みたいなあのふわふわした羽が欲しいの!!あれで飛んでみたいわけ!!それか魔女が箒で空飛ぶみたいな!」
「飛ぶしか出来ない幼い魔女の話じゃ、自転車で空飛んでたじゃねぇか。あれでいいだろ。夏になったら日本一でかい湖でみんな頑張って飛んでるぜ?」
「鳥人間コンテストっ!!確かに空飛んでるけど、体力のない私には無理!!…じゃなくてさ!!」
なんだって、アンタと話をしてたらこんなにも話が逸れるわけ!!
すると彼は軽く息を吐いて、腰に手を当てて説教モードに入った。
「あのなー。そもそも、オレたちは人間だぜ?空なんて文明の機器使うか、青いタヌキの不思議なポケットから黄色くてプロペラのついたどんな原理で浮くかも分からねぇ機械を使うしか無理。」
「そんな夢のないことを…」
「じゃあ、来世で願うんだな。天使になれますようにって。」
呆れたように言う彼に、少し泣きたくなった。
確かに夢を見すぎてると思う。大抵のことは大まかだけど理解できるくらいに大人になった。それでも、夢見るくらい人の勝手だ。こんなにバカにして呆れなくてもいいじゃないか。
そんなことを考えていると視界が滲み出した。泣くな、泣くな自分。それでも自分の目から溢れ出してくる涙に私は思わず下を向いてしまった。すると、彼のため息が聞こえた。
「……泣くなよ。」
「泣いてないし。」
「じゃ、顔上げろ。」
「嫌。」
「わがままなやつめ。」
彼はそう言って、笑った。
それから、彼とは1週間話さなかった。
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