十二国記:楽俊小説

□少年王。3 塙麒失道編
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十年の時が流れた。

首脳会議は定期的に開かれ、一定の成果を挙げていた。

巧国では、遂に他国に流出した荒民を死罪とする勅令が発せられた。
楽俊の根回しのおかげで、巧に戻ってくる荒民はここ数年いなかったが、これから巧を出ようとする民が関所で捕らえられては、刑に処されていた。

半獣に対する法は、数年前に改められた。半獣は生まれてすぐ親から引き離され、里家に入れられた。
そして、土地を与えられぬまま、人より多くの夫役を課されていた。


「その結果、何が起こったと思う?」

六太は暗い顔で頬杖をついて主に問うた。延王は、フンと鼻を鳴らした。
「まあ、見当はつくが。一応、報告してもらおうか?楽俊。」

楽俊は沈痛な面持ちで拱手した。
「ある里家が義塾のような役割を果たし、全国の里家と、そこに住む半獣に呼びかけて・・
一斉蜂起しました。一昨日の事です。」

「王師は?」
「現在は各州師が対応し、王師は王宮を守っています。何しろ数が多すぎますから。」
延王は顎に手を当てた。
「楽俊。」
「はい。」

「さっさと行け。そして、お前がしたいと思うことをして来い。」
「したいと思うこと?」
楽俊は小首をかしげた。
「蜂起に加わるか?半獣達を諌めて回るか?それとも王の方を諌めるか?」
「・・・主上のお考えは?」

「阿呆か、お前の国の事だろうが。俺は、こういう時自分の判断で動ける様、お前を育ててきたつもりだったがな。それとも俺の買いかぶりだったか?」
楽俊が言葉に詰まると、延王はニヤリと笑った。
「いえ・・・ありがとうございます。」
「それで、どうする?」

「・・・塙台輔が心配です。」
「そうか、では行け。」
「御意。」

楽俊は拱手して、退出した。延王は、それを満足そうに見送った。
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