むかし昔のお話しです。



ある所にとても仲の良い親子がおりました。
早くにお母さんを亡くした為、お父さんは二人の子供をそれはそれは大事に育てました。
二人の子供は同じ名前でした。それは昔から村に伝わる言い伝えにより、名付けられた名前です。
赤茶の髪に金の瞳をもった少年が歌えば夜空に輝く星は一層煌めきを増し、藍い髪に青の瞳をもった少年が歌えば朝の霧は晴れ太陽の恩恵が降り注ぐと言われていました。

成長してからも二人はとても可愛らしく美しく、その噂は森に住む精霊にも届く程。

その頃の森は荒れ果て醜く、あまり人が近寄ってはくれませんでした。
人々は茸や果実など森からの恵みを授かる時以外、森に入ることはなく、その恵みも人々の手によって荒らされたこで年々少なくなっていきました。

ある時食べ物がまったく取れない年がありました。人々は森の精霊に何とかして食べ物を分けてもらおうと相談しましが、森の精霊は首を縦には振ってくれません。

ある日のこと、森の精霊が言いました。
二人の少年私に下さい。さもないと、森の恵みは渡せません…と。
村の人達がそのことを少年のお父さんに伝えると、お父さんは子供達を家の奥に隠して決して扉を開こうとはしませんでした。しかし、村の人がお腹をすかして苦しんでいる声が少年の耳に届くと、二人はお父さんに涙ながらに訴えました。
「お父さん、僕達が行けばみんな苦しまずに済むのでしょう?」
「だからお父さん。僕達は行きます。行って、食べ物を分けてもらってきます。」
お父さんは二人を抱きしめて泣きました。
次の日。二人の少年は精霊の元へといき、食べ物を分けてもらうかわりに、ずっと森で過ごす約束をしたのです。

少年達のお父さんは毎日泣いて暮らしました。
村の人々は二人の少年に感謝しながら再びもたらされた森の恩恵によって幸せに暮らしています。お父さんは二人のいない生活に耐えられなかったのです。
お父さんは毎日息子達の為に祈りました。

「神様。どうか可愛い息子達を森から助けて下さい。苦しみから助けて下さい。」

お父さんが祈り続けたある日のこと。村に一人の旅人がやってきて言いました。
「朝と夜の精霊様は美しい歌が好きだから、話しをしたらきっと助けてくれますよ。」
その話しを聞いたお父さんは村を出て精霊様を探しに行きました。山を越えて川を越えて、大きな谷を降り海を渡り。様々な場所を旅して朝と夜の精霊様を探しました。
しかし精霊様が見付からないまま時は過ぎていきました。
そして遂にお父さんは砂漠で倒れてしまいます。

生と死の狭間でもお父さんは祈り続けました。
「神様…私の全てを差し上げます。どうか私の子供達を助けて下さい。」

お父さんがもう駄目かと思ったその時、目の前に二人の青年が現れて言いました。

「その願いを叶えてあげよう」
「子供達も貴方も、とても辛い思いをしていたのですね」

二人の青年がお父さんに触れるとその身体は金色に光り、お父さんは旅に出る前と同じ姿になりました。
更に二人の青年は少年達が捕らわれている森に行くと森の精霊に言いました。
「二人の少年を解放してあげなさい」
「森は貴方だけのモノではありません」
森の精霊は怒って二人の青年に魔法をかけました。しかし、二人の青年に魔法は効きません。
「これ以上この森を穢すわけにはいきません」
一人の青年が右手を翳すと綺麗な光が森の精霊を包み、光が消えると同時に森の精霊も消えてしまいました。
そしてもう一人の青年が左手を翳すと闇がその手の中に集まり、森の中は燦々と降り注ぐ光に満ち溢れ、昔の綺麗な森に戻りました
最後に二人は大きな樹の根元で眠っていた少年達を助けてくれました。

少年達は口を揃えて言いました。

「ありがとうございます。お礼に私は毎日貴方の為に朝の歌を歌いましょう。」
「ありがとうございます。お礼に私は毎日貴方の為に夜の歌を歌いましょう。」

青年達は頷き二人をお父さんの待つ場所へと連れて行ってあげました。
三人は抱き合って喜び、その後ずっと幸せに暮らしました。

二人の少年は約束通り毎日歌を歌いました。
その日から朝と夜の間には黄昏と黎明の時間が出来るようになりました。
黄昏時には歌う少年がもつ金色の瞳の様に空は金色に輝き、黎明時には歌う少年の青い瞳の様に空は澄みわたります。

それは二人の青年…朝と夜の精霊が二人の歌を聴く為だと言われています。





***********

[TOPへ]
[カスタマイズ]




©フォレストページ