ダブルアーツ

□互いの愛を確かめるように
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互いの愛を確かめ合うように寄り添う度に 触れる度に心がどうしようもなく痛む。
それとなく触れたエルーの頬は冷たくて、やはり病魔が傍らに居るということを教えていた。
自分に何が出来るか…。考えたところでこうして彼女の体温を思い知ることだけ。自分の使命を過酷だとは思わなかった。彼女の背負ってきたものを考えれば…。

だけどやっぱり、また心がどうしようもなく痛んだ。


「こうして触れてるのに…」

「アンタが生きてる実感がしないよ、」


そう言うと彼女は一瞬目を見開いて、それから涙を流した。
そこで自分の発言がいかに軽率だったかに気付く。
しかし本音だった。

触れて感じる冷たさに、彼女が生きているのか不安になる。夜中ふと目が覚めたとき、歩いていて風が吹いたとき、人混みに揉まれそうになったとき。
彼女の冷たさは、自分に酷く浸透して、

たまに不安になるのを


「エルー、」
「呼吸して、」
「心臓の音聞かして、」
「触らせて」

「ごめん、エルー」
「笑って、」


不器用な自分たちの愛が、決して世迷い言で壊されぬように、荒々しい愛撫で壊れてしまわぬように、
おどおどした指先が、胸の痛みと悲しみを貫通して、少しの幸せが生まれるのと同じように

互いの愛を確かめるように




触れ合った肌は、温かかった。













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