ダブルアーツ

□Merry X'mas!
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クリスマスな夕食に腹が満たされた頃、大きなケーキが運ばれてきた。形は少し歪だが、悪くない。ふわふわして美味しそうな生クリームが苺を包んで、スポンジの上に置かれていた。俗に言うショートケーキ。


「誰かの手作り?」

「喜びなさい、キリ!エルーちゃんの手作りよ!」


その言葉にエルーの方を向くとエルーは頬を赤らめながら頷いた。可愛い…!
料理が苦手なエルーがオレの為に一生懸命作ってくれたケーキ。絶大に美味いに決まっている。だって彼女が作ってくれたケーキなんだから。
ケーキを分け食べ始める。母さんは美味しいー!!と叫び、エルーが横で微笑んでいるのが分かった。


「ホント、美味いよ。」


最高。
その言葉にエルーの頬は再び赤く染まって、机の下で繋ぐ手の力が強まった。ありがとうございます、良かった…と安心したように小さく呟くのも聞こえる。
その動作が可愛くて愛しくなって、そのケーキを食べ終わったらすぐにエルーとオレの自室へ戻っていった。



――――――――――――


「はい、プレゼント。」

「うわぁっ、そんなキリさん…気を使わなくても良かったのに…」

「なーに言ってんの。恋人なんだから、あげたいに決まってるだろ。」

「私、まだ何も準備してなくて…キリさんの好みに、悩んじゃって…」

「ケーキ、美味しかったから良いよ。それより早く、開けてよ。」

「うー…はい。キリさん、ありがとうございます。」


いただきます。
なんて、可愛いこと良いながらラッピングの包みを開ける。中には昼間に購入したぬいぐるみとピンが入っている。それを見た瞬間彼女の頬が綻び、最高の笑顔で言うのだ、ありがとう!と。


「(可愛いな…)」


エルーがぬいぐるみを抱き上げる。大事そうに抱き締めながら今日からはこの子も一緒に寝ますね。キリさんから貰ったのだから、ずっと持ってます、なんて可愛いことをスラスラと言ってくれる。


「あー…あと、さ」

「?」

「手、出して」

「は、はい。」


何か恐いですね。と笑う彼女。何も恐くないよ、なんて笑ってポケットから出したソレを指につけた。


「……………!!」

「安もんだけど、約束。」

「え、っと…」

「オレがもっとちゃんとした男に、なれたら…エルーと…そうなりたいって思うか、ら」

「キリさん、…」


彼女の指につけられたのはクオーツで装飾されたシンプルな指輪。道の端で絨毯を広げてアクセサリーを売っている店で購入したもの。すごく安い。でも、それでも彼女は嬉しそうに手のひらを眺め、オレに抱きついてきた。


「う、れしいです…っ」

「うん。好きだ、エルー」

「私も、私も大好きです、」



キリさん、
そう続く声は声にならずに、
重ねられた唇でかき消された。

空に降る雪は窓から優しく漏れる光に反射して、儚げに降り募っていった。
夜は、まだ長い。






(Merry X'mas....)
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